【大阪の離婚弁護士が教える】不貞相手に複数の交際相手がいる場合、慰謝料の増額事由になるか

1.はじめに

夫が女性Aと不倫していることから、Aに対して慰謝料を請求しようとした妻がいたとします。

この妻が調べたところ、女性Aは自分の夫だけでなく、複数の男性と交際関係にあることが分かりました。

では、このような事情は慰謝料の増額事由になるのでしょうか。

この点が問題となった裁判例を見てみたいと思います。

 

2.裁判例

【東京地裁平成30年1月31日】

この裁判で、原告(妻)は次のように主張しました。

 原告は,亡Aと婚姻後,同人との間に2子をもうけており,平穏であった婚姻期間は約32年間と長期にわたっていたこと,不貞期間は約4年半と長期にわたるものであったこと,原告は,亡Aの看病を続けていたにもかかわらず,死の直前である平成28年2月2日又は同月3日に同人から懺悔として被告との不貞関係を突然告白されて動揺し,激しい精神的ショックを受けるとともに,亡Aの死期が間近に迫る中,同人を許す,許さないといった感情の整理をつけられないまま,同人が亡くなるまで看病に尽くしながらも苦しみ抜いたこと,被告は,亡Aとの不貞と並行してD氏とも交際していた時期があり,その後も,亡Aとの不貞と並行して現在の夫とも交際していたことから,亡Aをも裏切る形となっており,そのことが原告に対する精神的苦痛を加重させていること,亡Aは,世界的に有数の証券会社の副会長職まで務め,退職後は金融・証券に関する専門知識と長年の経験を買われてb法律事務所のチーフオペレーティングオフィサーとして招かれ,同事務所のマネージング等を担当しており,年間数千万円という高額の年収を受けていたにもかかわらず,死後の財産は大洗町の自宅のほか,約400万円の銀行預金しか残っておらず,数百万円に上る借金まであったことからすると,被告は,亡Aから多数回にわたるプレゼントや食事代・宿泊代等の多額の経済的利益を享受していたものと思われること,提訴前,原告代理人は,被告に対し,その旧姓名義で慰謝料の支払を求める内容証明郵便を送付し,被告はこれを受領したにもかかわらず,宛先違いであるから返却する旨の一筆と共にこれを返送するという不誠実な対応をしたことに照らすと,悪質性は極めて高いというべきであり,通常の事案と比較しても,高額な慰謝料が支払われるべきである。以上を考慮し,原告の被った多大な精神的苦痛を金銭的に評価すれば,1000万円を下回ることはない。

 

これに対して、不貞相手(A)は次のように反論しました。

 亡Aは,被告の他にもホステスを指名して交際を図っていたのであり,それらのために多額の金銭を出費していたことが窺われる。また,2人の子供を米国留学させていたのであるから,その費用も多額に及んだはずである。さらに,被告のD氏や現在の夫との交際は,何ら慰謝料の増額事由になるべきものではない

 

では、裁判所はどのように判断したのでしょうか。

 また,原告は,被告が,亡Aと不貞行為に及んでいた期間中に,D氏やB氏との交際にも及んでいたことは慰謝料の増額事由に該当すると主張するが,それは,最期まで被告が独身であり自分に対して好意を抱いてくれていたと思っていた亡Aにとって残念な事情であったことはともかく,原告に対する慰謝料の増額事由として評価することはできない。
 (4) 以上の諸事情を総合考慮するとともに,不貞行為が被告と亡Aとの共同不法行為であることを併せ考えると,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,100万円をもって相当と認める。

 

裁判所は、このように判断して、不貞相手に複数の交際相手がいることは、妻の慰謝料請求においては一切考慮しませんでした。

慰謝料額については、原告(妻)が1000万円請求したのに対し、裁判所が認めた額は100万円にとどまりました。

 

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