【大阪の離婚弁護士が教える】再婚相手と子どもが養子縁組した場合の養育費

例えば、離婚後、元夫から養育費が支払われていたところ、自分が再婚することになり、再婚相手と子どもが養子組することとなったとします。

このような場合、元夫の養育費は減額となるのでしょうか。

また、養親縁組したのが令和6年4月であったところ、元夫がその事実を知ったの令和7年4月であり、養育費減額調停を申し立てたのは同年5月であったという場合、いつから減額となるのでしょうか。

今回はこのような問題に関する裁判例を紹介したいと思います。

 

【東京高裁平成28年12月6日決定】

 2 両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第一次的には,親権者及び養親となった再婚相手が負うべきものであるから,かかる事情は,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費を見直すべき事情に当たり,かつ,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費は零となる。したがって,本件公正証書により合意した抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費は零となる。
 3 次に,抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零に減額すべき始期について検討すると,かかる点についての判断は,家事審判事件における裁判所の合理的な裁量に委ねられているところ,累積した過去分を一度に請求される危険(養育費請求又は増額請求の場合)や既に支払われて費消した過去分の返還を求められる危険(養育費減額請求の場合)と明確性の観点から,原則として,養育費の請求,増額請求又は減額請求を行う者がその相手に対してその旨の意思を表明した時とするのが相当である(なお,本件公正証書には「双方の協議により,前項の養育費額を変更することができる」(第2条2項)と記載があり,その文言からすると,双方の協議が成立して初めて養育費額が変更されるようにも解されないではないが,養育費額を変更すべき客観的な事情が発生し,当事者の一方がその変更を求めたにもかかわらず,他方がこれを承諾しない限り養育費額が変更されないというのは,合理的ということはできないから,家事審判事件において養育費額を変更すべき事情があると判断される場合,上記のとおり,養育費の増額請求又は減額請求を行う者がその相手に対してその旨の意思を表明した時から養育費額を変更するのが相当である。)。
 本件では,相手方が再婚したことに伴って未成年者らが相手方の夫と養子縁組をしたのは平成26年5月●●●日であるところ,前記認定のとおり,抗告人は,同年7月頃には,かかる事実を知りながら養育費の支払を継続しているものの,同年11月●●●日付け準備書面において,同年5月●●●日付けの上記養子縁組以降は本来抗告人に養育費の支払義務がない旨の主張をしており,平成27年4月には,その支払を打ち切っていることが認められ,抗告人は,相手方に対し,その後,養育費の支払をしていないことに照らすと,同月には養育費の額を零とすることを求める抗告人の意思が明確に示されたものというべきであり,抗告人は,相手方に対し,遅くとも同月には,養育費の額を零とすることを黙示的に申し入れたと認めることができる。
 したがって,本件においては,同月から抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零(支払義務の免除)に減額するのが相当である。

 

この裁判例は、再婚相手と子どもが養子縁組した場合、養育費は0円となるとしたうえで、0円となる時期は、養子縁組をした時点ではなく、元夫が減額請求の意思を表明したときからと判断しています。

なお、後者の点については、元夫が養子縁組の事実を知りつつも一定期間は養育費の支払を行ってきたという事案であることには留意する必要があると思われます。

 

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