【大阪の離婚弁護士が教える】離婚訴訟の財産分与の裁判における附帯控訴の要否・可否
1.問題の所在
前回の記事と同じ例ですが、妻が夫に対して離婚訴訟を提起して、離婚と財産分与1000万円を求めたところ、夫は離婚については異存ないものの、財産分与の額は200万円だと争ったという事案があったとします。
この事案において、第1審では、離婚を認容するとともに、夫に対して財産分与として妻に500万円支払えとの判決が出されたので、夫が控訴したとします。
前回の記事で説明したとおり、離婚訴訟の財産分与の裁判においては不利益変更禁止の原則は適用されません。
したがって、控訴審(2審)が、財産分与の額を1審よりも多額の800万円などにすることも可能ということです。
もちろん、1審よりも減額して、夫の主張する200万円とすることも可能です。
このように、不利益変更禁止の原則が適用されない以上、上記例でいうと、妻側は附帯控訴をする必要性がないのではないかということが疑問として出てきます。
2.財産分与の相手方(義務者)が控訴した場合
上記のような場合に、妻側としては、①附帯控訴をした方がいいのか(すべきなのか)、②附帯控訴はしても、しなくてもどちらでもいいのか(してもあまり意味はないのか)、③附帯控訴をすることはできない(してはいけない)のか、いずれなのでしょうか。
当事務所で調べた限りでは、この問題について明言している文献等は見当たりませんでしたが、少なくとも③ではなさそうです。
というのも、実際に附帯控訴をしている裁判例があるためです(公刊物登載の近時の裁判例でいうと、東京高判令和3年3月16日など)。
したがって、附帯控訴が禁止されていない以上、附帯控訴をして、財産分与の増額を求める意思を明確にしておくという方針を取るケースもあるといえそうです。
3.財産分与の申立人(権利者)が控訴した場合
別の例を出してみたいと思います。
妻が夫に対して離婚訴訟を提起して、離婚と財産分与1000万円を求めたところ、夫は離婚したくないと主張して離婚自体を争ったという事案があったとします。
この事案において、1審は離婚を認めるとともに、夫に対して財産分与として妻に300万円を支払えとの判決を出したところ、妻側が財産分与の額に不満があるということで、控訴したとします。
夫としては、財産分与の額が300万円であれば離婚を受け入れようと思って控訴しなかったところ、妻から控訴されたことを知った場合に、どのようにすればいいのでしょうか。
夫としては、財産分与の額が上がるのであれば離婚したくないという発想も考えられなくはありません。
この点については、「被控訴人が附帯控訴すれば離婚の当否についても争われることになる。原告が離婚と1000万円の財産分与を請求していたところ、第一審では離婚は認められたが財産分与としては300万円しか認められなかったため、原告がそれを不服として控訴をしたような場合に、控訴審で財産分与額の大幅な増額があるのであれば被告は附帯控訴をして離婚請求そのものを争うことができる」と説明されています(『新基本法コンメンタール 人事訴訟法・家事事件手続法』日本評論社86頁)。
したがって、夫は、附帯控訴をして離婚自体を争うという選択肢もあるということになります。
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