【大阪の離婚弁護士が教える】婚姻を継続し難い重大な事由とは何か?~配偶者への暴言があった場合~

暴力はなくとも、暴言が問題となる事案は多数あります。

では、配偶者に対する暴言は婚姻を継続し難い重大な事由の一事情となるのでしょうか。

この点が問題尾となった一つの裁判例をご紹介します。

 

【東京地裁平成16年9月28日】

 前記1の認定事実によれば、原告と被告は婚姻後二十数年にわたり、ほぼ平穏な婚姻生活を続けてきたが、平成2年ころから次第に夫婦が共に行動することが少なくなり、平成8年ころからは互いに日常会話を交わすことも極端に減った上、平成9年初めころ、被告が原告との性交渉を拒否して以降、全く性生活を行なうこともなくなり、特に原告において強い疎外感にとらわれるようになっていたところ、平成13年5月ころ、訴外Fから、被告が当初は訴外Gとその後は訴外Hと不倫関係にある旨聞かされた原告が、その真偽のほどを問い質したのに対し、被告が、殺してやるなどと大声を上げて原告を威嚇し、原告の質問にまともに答えようとしなかったことから、原告において、このような被告の対応は、被告が不利な立場に立たされた場合のいつものやり方であると感じて辟易とし、被告と気持ちの通わない婚姻関係を続けることに絶望する一方、被告に対してその女性関係を疑って不信感を募らせ、調査会社に依頼して被告の行動を調査するなどした結果、被告が訴外Hと男女関係にある等とする訴外Fの話しを確信し、被告との離婚を決意し、本件訴訟提起に至ったというのであり、原告が離婚を決意した経緯やその間の被告の対応、更には本件訴訟提起後の経緯(原・被告は同じ本件マンションに居住しているものの、寝室も食事も別々にしている。)等に照らすと、原告と被告の婚姻関係は、既に完全に破綻したものといわざるを得ない。この点、被告は、原告が長女Aの事件にかかわり、被告から叱責され、その矛先をかわすため離婚の話しを持ち出したものである旨主張する。確かに、前判示のとおり、原告が、被告の行動の調査等を行なったのはAの事件が持ち上がった後のことであることが認められる。しかしながら、原告はAの事件が持ち上がるほぼ半年前に訴外Fから被告の不倫関係について聞かされ、その2か月後には、被告に対してその旨問い質すとともに、その際の被告の対応から被告に対する不信感を強めたことは前判示のとおりであり、たまたまその時期にAの事件が発覚したため、その後に原告の被告に対する調査が行なわれることになったにすぎないものというべきである。
 ところで、本件訴訟提起後においても、原告の離婚の意思は固いものであることがうかがわれるところ、そのように原告の気持ちが被告から完全に離れてしまったについては、被告の訴外H等との不倫問題があり、その発覚が原告の離婚の決意を不動のものにしたものであることは否定し難いものの、その前提として、原・被告間の意見が対立した場合などに、ことごとく大声を上げて自分の言い分のみを通し、原告の意見を全く聞こうとしない被告に原告が辟易とし、被告との婚姻関係を続けて行くことに絶望したこともその大きな要因であること前判示のとおりである。そして、被告としても、このような原告の気持ちを忖度せず、事々に大声を上げて原告の発言を封じて来た上、特に訴外Hとの不倫問題が発覚して後も、訴外Hとの関係について原告に対して納得できる説明をするなど破綻に瀕した夫婦関係を修復すべき努力をしたとはいえないのであり(原告に不倫の疑念を抱かせた以上そのようにすべきものである。)、婚姻関係の破綻の原因ないしその責任は、被告にあるものといわざるを得ない(もっとも、原告も、前記不倫問題発覚後、被告にその真偽のほどを問い質したことはあるものの、被告が大声を出して怒鳴るなどした前記の対応もあって、特にAの事件が発覚して以降は、原告と訴外Hが不倫関係にあることの証拠を集めることに躍起になっており、被告との婚姻関係の修復を図るための行動をとった痕跡が見られないことや、本件訴訟提起後も、婚姻関係の修復を求める被告に対して全く耳を貸そうとしない原告の対応等にかんがみると、その離婚の決意が並々ならないものであることがうかがえる一方で、原告において比較的早い段階で離婚の意思を固めたものであることが推認される。そして、平成13年5月に被告の不倫話しが問題になるまでは、原告が被告の女性問題で悩まされるといったことも見受けられないこと、Aの問題が発覚するまで、被告から原告に対して訴外会社から支給される報酬等の全部を渡しており、その金額から見ても、原告及び被告一家の生活は経済的にみて安定したものであったことがうかがわれること等からすると、原告の離婚の決断は、やや唐突の感をぬぐい去ることができないというべきである。)。

 

このようにして、被告(夫)が大声を出して怒鳴るなどことを認定し、婚姻関係破綻の責任は被告(夫)にあるとして、離婚を認容しました。

この裁判例から分かるように、一方配偶者に対する暴言は婚姻を継続し難い重大な事由の一事情となり得ると考えられます。

 

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