【大阪の離婚弁護士が教える】月2回の面会交流が認められた裁判例の紹介

面会交流が実施される場合、実務上はその頻度は月1回程度となることが多いといわれています。

当事者間の合意があれば、これよりも高頻度となる例もないわけではありませんが、こと審判手続においては、月1回よりも高頻度の面会交流が認められるのは稀だといえます。

もっとも、月2回の面会交流を認めた近時の裁判例がありますので、今回はご紹介したいと思います。

【東京高決令和4年3月17日】

主文

 抗告人は、相手方に対し、本決定確定の日の属する月の翌月から、以下の要領で、相手方が未成年者らと面会交流することを認める。
 (1) 頻度 毎月2回
 (2) 実施日、実施時間(以下、アないしウの月数は、本決定が確定した日の属する月の翌月を起算月とする月数をいう。)
 ア 本決定が確定した日の属する月の翌月から6か月目まで
 いずれも日曜日の午前9時から午後5時まで
 イ 7か月目以降
 毎月1回は日曜日の午前9時から午後5時まで
 毎月1回は土曜日の午後6時から翌日の午後5時まで
 ウ 13か月目以降の協議
 13か月目以降については、一方の当事者は、他方の当事者に対し、実施日及び実施時間の変更(増減を含む。)についての協議を申し入れることができ、他方の当事者は、これに応じて本件面会交流の実施日及び実施時間の変更(増減を含む。)について誠実に協議するものとする。

 

裁判所の判断理由

子らには配慮を要する喘息があり、その治療等のため月1回程度土曜日に通院することが多く(乙15、16、57ないし59、調査報告書)、面会交流は日曜日に実施されることが多かったところ、現状の面会交流の内容を直ちに大きく変えることは子らにとって負担が大きいおそれがあること、相手方において、単独で双子の宿泊付き面会交流をした実績はなく、安定的かつ継続的な面会交流の実現に向けて、子の利益の実現の観点から、子らの体調面や高葛藤状況にある抗告人に対する適切な配慮ができるか否かを見極める必要があることなどを考慮すると、面会交流の内容については段階的に拡張すべきであり、①本決定が確定した日の属する月の翌月から6か月目までは、月2回いずれも日曜日の午前9時から午後5時まで、②7か月目以降は、1回が日曜日の午前9時から午後5時まで、他の1回が宿泊を伴う土曜日の午後6時から翌日の午後5時までとし、③13か月目以降に、実施日及び実施時間の変更(増減を含む。)について協議することができるものとすることが相当と判断する。
 イ これに対し、抗告人は、①相手方は、同居中、子らに対し、怒鳴る、机を叩くなどの言動があり、夜単独で監護したときもその時間は午後6時から子らが寝付く午後8時までの2時間程度にすぎなかったところ、長時間単独で子らを監護した実績がない相手方が子らと母親のいない状況で長時間過ごすことは、子らの精神的負担となること、②相手方が、現在でも、保育園から抗告人実家前まで子らに付きまとい、子らの面前で抗告人を非難するなど、抗告人との激しい葛藤状況や子らとの不適切な関わりが続いており、抗告人及び抗告人両親にも大きな精神的負担を与えている中で、月2回の面会交流を実施することは、子らの健全な発達に悪影響を及ぼすこと、③双子の育児は通常以上に監護者に負担がかかる上、子らが時間差で体調不良となる場合にはさらに負担がかかる中、高葛藤状況にある相手方との間でさらに頻繁な連絡調整をすることになると、抗告人の負担が重すぎること、④子らは喘息の持病があり、かなりの頻度で土曜日に通院していたほか、耳鼻科等の受診や予防接種等もあり、土曜日の面会交流とすると子らの健康維持に支障を来たすこと、⑤子どもの新型コロナウイルス感染拡大が止まらないこと、⑥監護補助者がいない相手方が、未だ洗髪、食事、排便、歯磨き、洗顔等に介助を要する双子の身の回りの世話を1人でできるとは考えられず、宿泊付き面会交流は子らの生活に支障が生じることなどからすれば、現実的かつ継続的に実施できる直接交流の頻度、実施日、実施時間は、1か月に1回第2日曜日、3時間、宿泊なしの面会交流であると主張する。
 しかしながら、上記①については、少なくとも相手方が同居中に毎朝朝食準備・送迎等を分担し、毎月数回程度は保育園の迎えから寝かしつけまでを単独で行ったことがあり、子らが相手方に懐いていることなど前記アの事情に加え、令和2年7月及び同年9月から同年12月まで、相手方と子らが6時間の面会交流を行う中で抗告人の懸念する問題が生じたと認めるべき資料はないことなども考慮すれば、毎月2回休日の面会交流が子らの過大な精神的負担となるとまでは認められない。上記②については、確かに、現在、相手方と抗告人とは激しい葛藤状況の下にある上(前記1(7))、相手方が毎日朝夕に子らに会いに行く中で、子らの面前で面会交流の現状等について抗告人を非難する言動があったことが葛藤状況の激化を招いていることが認められるから、子らが父母の葛藤を十分に理解できる発達段階に達すれば忠誠葛藤を生じさせかねないものの、他方で、現時点では、子らに紛争の影響が顕著に表れているわけではなく(調査報告書)、子の利益の観点からの影響の有無・程度については、13か月目以降に実施日及び実施時間の変更(増減を含む。)の協議をする場合に考慮することが相当である。上記③については、本決定に従った面会交流の実現に伴い、抗告人の連絡調整等の負担が増加することは確かであるが、他方、高葛藤状況の要因となってきた相手方の子らへの取決め外の接触や、相手方の抗告人に対する非難的言動が減少することも期待されるところであり、そうした影響を見極めつつ、13か月目以降の実施日及び実施時間の変更(増減を含む。)を協議することが望まれる。上記④については、前記アのとおり曜日に配慮すれば足りるものであり、上記⑤については、面会交流の場所等を含め、子らの新型コロナウイルス感染防止に関して相手方による十分な配慮がされる限り、子らの健康状態に対する危険が高いとまではいえない。上記⑥について、相手方に宿泊付き面会交流の実績がなく、監護補助者もいないことは確かであるが、同居時における毎朝及び月数回の夜における監護の実績(前記(1)ア)に加え、子らが成長しつつあること、面会交流時(甲30、31)や面会交流観察時の監護の状況(調査報告書)等を踏まえると、段階的な宿泊付き面会交流の妨げとなるとまでいうことはできない。
 したがって、抗告人の上記主張は採用することができない。

 

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