【大阪の離婚弁護士が教える】共同親権の場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?
1.はじめに
2024年現在の現行制度は単独親権しか認められていませんので、離婚する際は必ず父母のどちらかに親権者を決めなければなりません
この場合、親権者になった方の親の戸籍に子どもを入れて、親権者と子の氏を同じにするのが通常です(詳細はこちらの記事を参照ください)。
例えば、離婚によって母親(親権者)が旧姓に戻ったことに伴い、子どもも母の旧姓と一緒にするということを、母親が単独で決定できるということです。
では、共同親権になった場合はどうなるのでしょうか。
双方が親権を持つ以上、父親(夫)、母親(妻)それぞれが、子どもには自分の氏を名乗ってほしいと主張したらどうしたらいいのかという問題が発生するわけです。
今回はこの問題を見ていきたいと思います。
2.共同親権と子の氏
本サイトでは繰り返し説明していますが、民法改正によって共同親権制度が導入されることになりましたが、離婚時に必ず共同親権にしなければならないわけではなく、単独親権とすることも可能です。
単独親権とするのであれば、現行制度と同様に離婚後の子の氏をどうするかは親権者が決めればよいということになります。
一方で、夫婦の合意で共同親権とした、あるいは裁判所の判断で共同親権となった場合は、離婚後も互いに子の親権を持つことになるため、子の氏をどちらの氏にするかという点で意見が対立した場合にどうするのかという問題が生じます。
例えば、鈴木姓の夫婦・子どもがいたとして、その夫婦が離婚するに際して、共同親権にすることにした上で、子どもは妻と一緒に暮らすことになったとします。
妻は離婚に伴って旧姓の佐藤姓に戻ることになったため、子どもと自分の姓が違うのは不都合だということで、子どもを自分と同じ佐藤姓にしたいと主張しました。
それに対して、夫は鈴木姓のままにしてほしいと主張し、意見が対立するというような場面が想定されます。
共同親権下でも単独で親権行使ができる場面についてはこちらの記事にまとめていますが、子の氏をどうするかについては、単独で親権行使できる場面とは考えられていません。
そこで、この問題に関する国会のやり取りを見てみることにします。
Q.子の氏の変更、離婚しました、妻は旧姓に戻ります、でも子は、大体九五%、夫の姓で戸籍に入っています。子の氏の変更をしたい、もう一緒に暮らすから名前同じくしたいという場合、子の氏の変更に関して共同親権の別居親が反対したらどうなるんですか。
A.(政府参考人) 子が父又は母と氏を異にする場合には、民法第七百九十一条第一項の規定によりまして、子は家庭裁判所の許可を得て戸籍法の定めるところにより届け出ることによってその父又は母の氏を称することができます。また、子が十五歳未満であるときは、同条第三項の規定によりまして、その法定代理人が同条第一項の行為をすることができるとされておりますところ、父母の双方が親権者であるときは、父母の双方が法定代理人となり、父母が共同して行うこととなります。
この場合において父母の意見が対立したときは、改正民法第八百二十四条の二第三項の規定によりまして、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができます。
なお、本改正案では、子の氏の変更に関する親権行使者の指定の裁判は離婚訴訟の附帯処分として申し立てることができることとしておりまして、そのような申立てがあった場合には、離婚判決において親権行使者が定められることとなります。
(第213回国会参議院法務委員会会議録第8号)
ということですので、子の氏をどうするかという点をめぐって父母の意見が対立した場合は、どちらが子の氏を決定していいのかを家庭裁判所に決めてもらう必要があるということになります。
以前の記事にも書きましたが、家庭裁判所に決めてもらうとして、決着がつくまでにどの程度の期間を要するのかは気になるところです。
また、離婚時だけでなく、再婚の場面でもこの問題は発生すると考えられます。
例えば、上記の例でいうと、子と一緒に暮らす母親が再婚する際に、父親が「再婚相手と子どもが養子縁組するのはダメ。子どもが再婚相手の姓を名乗るのもダメ」といった場合にも、同じように家庭裁判所の判断を仰ぐ必要が出てくると考えられます。
再婚時の子の氏の問題に関してはこちらの記事を参照ください。
☆共同親権に関する疑問点まとめ
・今後離婚する人は全員共同親権になるのか?
・夫婦の協議で共同親権にするか、単独親権にするか決まらなかった場合はどうする?
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際にどういったことを考慮するか?
→こちらの記事を参照ください。
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際、原則はどちらにするのか?
→こちらの記事を参照ください。
・夫婦(父母)が別居している事案において、裁判所が共同親権と判断するのはどういった場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもはどちらの親と暮らすことになるのか?
・子どもと一緒に暮らす親にはどのような権限が与えられるのか?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権であっても単独で親権を行使できるのはどのような場面か?
・共同で親権を行使しなければならない事項について意見が対立したときはどうするのか?
・共同親権と監護権の関係性とは?
→こちらの記事を参照ください。
・現行制度と同様、親権者が決まるまで離婚することはできないのか?
→こちらの記事を参照ください。
・すでに離婚している人は共同親権とすることができるのか?
・すでに離婚している人が共同親権となるのはどのような場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?
→こちらの記事を参照ください。
☆弁護士法人千里みなみ法律事務所では、多数の離婚案件を取り扱っており、多くのノウハウや実績がございます。
離婚のご相談をご希望の場合はお問い合わせフォームよりご予約ください。