【大阪の離婚弁護士が教える】共同親権・条文解説⑥~親権者を決めないと離婚することはできないのか?~
1.現行民法の規定
現行民法は次のように規定されています。
【現行民法765条】
1.離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2.離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
【現行民法819条】
1.父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
つまり、離婚する際に、必ず父母のいずれかを親権者に決めなければ離婚することができないということです。
したがって、現行民法においては、親権者を決めることなく協議離婚を成立させて、離婚後に裁判所で親権者をどちらにするか争うということはできません。
2.改正民法の規定
改正民法では共同親権が導入されましたが、上記規定は次のように変更されています。
【改正民法765条】
1.離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないこと及び夫婦間に成年に達しない子がある場合には次の各号のいずれかに該当することを認めた後でなければ、受理することができない。
一 親権者の定めがされていること。
二 親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。
2.離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
第1項2号を見ると、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがなされていれば、離婚時に親権者が決まっていなくとも離婚届が受理されることが分かります。
したがって、例えば、夫婦間で離婚協議をして、共同親権にするのか、単独親権にするのか、単独親権にするとしてどちらが親権者になるのかといった点について合意に至れない場合には、裁判所に審判・調停の申立てをしておけば、ひとまず離婚することはできるということです。
これは現状の実務と大きく異なる点ですので、改正民法施行後に離婚される場合には意識しておくとよいと思われます。
☆共同親権に関する疑問点まとめ
・今後離婚する人は全員共同親権になるのか?
・夫婦の協議で共同親権にするか、単独親権にするか決まらなかった場合はどうする?
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・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際、原則はどちらにするのか?
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・夫婦(父母)が別居している事案において、裁判所が共同親権と判断するのはどういった場合か?
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・共同親権とした場合、子どもはどちらの親と暮らすことになるのか?
・子どもと一緒に暮らす親にはどのような権限が与えられるのか?
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・共同親権であっても単独で親権を行使できるのはどのような場面か?
・共同で親権を行使しなければならない事項について意見が対立したときはどうするのか?
・共同親権と監護権の関係性とは?
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・現行制度と同様、親権者が決まるまで離婚することはできないのか?
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・すでに離婚している人は共同親権とすることができるのか?
・すでに離婚している人が共同親権となるのはどのような場合か?
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・共同親権とした場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?
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