【大阪の離婚弁護士が教える】共同親権・条文解説④~子どもはどちらの親と生活するのか?~
1.共同親権と監護権の関係
今回の法改正では、共同親権制度が導入されますが、単独親権制度がなくなるわけではありません。
離婚の際の当事者間の協議でどちらかの親を親権者にすることを決めても構いませんし、当事者間で親権について揉めた場合には裁判所の判断でどちらかの親が親権者に指定される可能性もあります。
このように単独親権になる場合には、親権者と子どもが一緒に暮らすのが通常となると思われます。
では、当事者の協議あるいは裁判所の判断で、共同親権となった場合は、子どもはどちらの親と暮らすことになるのでしょうか。
改正民法を見てみることにしましょう。
以下で出てくる「監護」という言葉は、簡単にいうと子どもと一緒に暮らすことを指すと考えてもらってよいと思います。
【改正民法766条】
1.父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
(以下略)
第1項・2項を見ると、離婚する際には、子の監護者を決める方法、子の監護を分掌する(手分けして受け持つ)方法いずれもあり得ることが分かります。
単独親権にする場合には親権者が子を監護するのが通常だと思いますが、現行制度下でも親権者と監護者を分けることが稀にありますので、改正民法下でも単独親権を選択しつつ、非親権者を監護者とする例も理論上はあり得ると思われます。
一方、共同親権の場合は、必ず父母の双方で子どもを監護しなければならないかというと、そういうわけではなく、父母のいずれかを単独の監護者とすることもあり得ます。
すなわち、共同親権にしたからといって、例えば週の半分は父親と暮らし、残り半分は母親と暮らすというように、父母双方で子どもを監護しなければならないというわけではないということです。
もちろん、共同親権にした上で、父母が適当な頻度や周期等を定めて子の監護をするように定める事案もあると思います。
では、共同親権にしたけれども、監護者に関する父母の協議が調わないということで、裁判所に判断を委ねた場合には、裁判所は父母のいずれかを単独の監護者に命じるのでしょうか。
この点に関して、法務大臣は次のように説明しています。
父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要です。裁判所の判断で離婚後の父母双方を親権者と定めた場合に、父母が子の身上監護をどのように分担するかは、それぞれの事情により異なると考えられます。そのため、離婚後の父母の一方を監護者と定めることを必須とすることは相当ではないと考えております。
(第213回国会参議院本会議録第13号)
つまり、共同親権とした上で監護者をどうするかという点で、当事者間の合意ができない場合に、裁判所に判断を仰いだ結果、必ずしも一方を監護者と定められるわけではないということがいえます。
ということは、裁判所の判断で、前述したように、適当な頻度や周期等を定めて父母の双方が子を監護するというような結論となることもあるのかもしれません。
このあたりは裁判例が蓄積されるなどすることで家裁実務の傾向が見えてくると思われます。
2.監護者の権限
では、共同親権としたけれども、父母のいずれかを監護者と定めた場合には、監護親は、非監護親の干渉を一切受けることなく子供に関することを自由に決めるなどできるのでしょうか
たとえば、夫Aと妻Bが離婚するに当たって、共同親権とすることを決めた一方で、子の監護者は妻Bにしようと決めた場合、妻Bは自由に子どもに関することを決めていいのかという問題です。
この点については、改正民法は次のように規定しています。
【改正民法824条の3】
1.第766条(第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定により定められた子の監護をすべき者は、第820条から第823条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。この場合において、子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。
2.前項の場合には、親権を行う者(子の監護をすべき者を除く。)は、子の監護をすべき者が同項後段の規定による行為をすることを妨げてはならない。
上記の規定ぶりからすると、一方の親をこの監護者と定めた場合、その親は単独で子どもとどこで暮らすのかを決めたり、子どもの教育に関することなどを決めたりすることができるということです。
他方で、子を監護しない側の親は、(共同)親権者であっても、子を監護する親の前記行為を妨げてはならないとされています。
ということで、離婚する際に共同親権にしたとしても、父母のいずれかを監護者とすれば、その監護者は、他方親(共同親権者)に口出しされることなく、子どもの教育に関することなどを決めたりすることができるということになります。
翻って、「①子の監護及び教育、②居所の指定及び変更、③営業の許可、その許可の取消し及びその制限」以外のことについては、監護者の単独で決めることはできず、他方親(共同親権者)にも親権を行使する権限があるといえます。
☆共同親権に関する疑問点まとめ
・今後離婚する人は全員共同親権になるのか?
・夫婦の協議で共同親権にするか、単独親権にするか決まらなかった場合はどうする?
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際にどういったことを考慮するか?
→こちらの記事を参照ください。
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際、原則はどちらにするのか?
→こちらの記事を参照ください。
・夫婦(父母)が別居している事案において、裁判所が共同親権と判断するのはどういった場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもはどちらの親と暮らすことになるのか?
・子どもと一緒に暮らす親にはどのような権限が与えられるのか?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権であっても単独で親権を行使できるのはどのような場面か?
・共同で親権を行使しなければならない事項について意見が対立したときはどうするのか?
・共同親権と監護権の関係性とは?
→こちらの記事を参照ください。
・現行制度と同様、親権者が決まるまで離婚することはできないのか?
→こちらの記事を参照ください。
・すでに離婚している人は共同親権とすることができるのか?
・すでに離婚している人が共同親権となるのはどのような場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?
→こちらの記事を参照ください。
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