【大阪の離婚弁護士が教える】共同親権・条文解説③~裁判所が共同親権と判断するのはどういう場合?~
以前の記事で、離婚の際の当事者間の協議で、共同親権にするのか単独親権にするのか、単独親権にするとしてどちらが親権者になるのかといった点について合意に至らないときは、裁判所に決めてもらうということを説明しました。
つまり、裁判所が介入するのは、当事者間で親権者について話し合いがつかないときということになります。
そうすると、当事者が揉めている以上、共同親権とするのは無理なのではとも思えますが、前回の記事で説明したとおり、裁判所は原則として単独親権にするとか、共同親権にするというルールは採用しないと考えられています。
では、どういった場合に裁判所は共同親権という判断を下すのでしょうか。
この点について、政府参考人は次のように説明しています。
本改正案では、裁判所は、離婚後の親権者について、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断すべきこととしておりまして、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないものとはしておりません。
そして、父母の合意がないにもかかわらず共同親権とすることが子の利益にかなう場合があるか否かにつきまして、法制審議会家族法制部会における調査審議の過程では、同居親と子供との関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがあり得る旨の指摘がされたところでございます。
これらのケースがどのようなものかというお尋ねでございますが、例えば、同居親と子との関係が必ずしも良好でないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定等が図られるケースや、同居親の養育の状況等に不安があるが、児童相談所の一時保護の対象になるとまでは言えないようなケースについてもこれに当たり得ると考えております。
(第213回国会参議院法務委員会会議録第8号)
上記答弁を踏まえると、例えば、母親と子どもが一緒に暮らしているけれども、両者の関係が良好ではないとか、母親の養育に不安があるといった事情がある事案において、父親の関与もあった方がよいといえるような場合には、裁判所が共同親権と判断する可能性があると解釈できそうです。
この答弁だけを見ると別居中の父母の間で親権について揉めて裁判所を使わざるを得なくなった場合に、共同親権と判断されるケースはなかなか少なくなるような気もしますが、実際にどうなるかは制度が始まってみて、裁判例の蓄積を見てみないと分からない側面も多分にあると思います。
☆共同親権に関する疑問点まとめ
・今後離婚する人は全員共同親権になるのか?
・夫婦の協議で共同親権にするか、単独親権にするか決まらなかった場合はどうする?
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際にどういったことを考慮するか?
→こちらの記事を参照ください。
・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際、原則はどちらにするのか?
→こちらの記事を参照ください。
・夫婦(父母)が別居している事案において、裁判所が共同親権と判断するのはどういった場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもはどちらの親と暮らすことになるのか?
・子どもと一緒に暮らす親にはどのような権限が与えられるのか?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権であっても単独で親権を行使できるのはどのような場面か?
・共同で親権を行使しなければならない事項について意見が対立したときはどうするのか?
・共同親権と監護権の関係性とは?
→こちらの記事を参照ください。
・現行制度と同様、親権者が決まるまで離婚することはできないのか?
→こちらの記事を参照ください。
・すでに離婚している人は共同親権とすることができるのか?
・すでに離婚している人が共同親権となるのはどのような場合か?
→こちらの記事を参照ください。
・共同親権とした場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?
→こちらの記事を参照ください。
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