【大阪の離婚弁護士が教える】別居調停とは何か?別居調停で面会交流の合意はできる?
「別居調停」という言葉はあまり聞いたことがない方が多いかもしれません。
離婚調停の途中で調停委員から「別居調停」という言葉が出てきて、それはどういう意味だろうと思われる方もおられるはずです。
では、別居調停とは何なのかを今回は解説したいと思います。
通常、離婚調停の終了の仕方は、①調停成立、②調停不成立、③申立ての取下げのいずれかです。
このうち、離婚調停が不成立になるのは、他方当事者が離婚を拒んだ場合や親権等の離婚条件で合意ができない場合などが一般的です。
離婚調停が不成立になった後、離婚を求める側がやはり離婚したいと考える場合は離婚訴訟を提起する必要があります。
その一方で、離婚調停を重ねていく中で、いきなり離婚訴訟ではなくて、少し冷却期間を置いてみたいと考える方もおられます。
このような場合に、とりあえず当面の間、別居しましょうということを合意する形で成立する調停のことを一般的に「別居調停」といいます。
申立てがあったのは「離婚調停」なのに、調停の終盤に調停委員などから「別居調停」という言葉が飛び出すのは、これでご理解いただけたのではないでしょうか。
また、単に調停を不成立にしてしまうと、何の合意もなく一旦は事件終了ということになりますが、そうではなくてせっかく調停で色々話し合ったので、すぐに離婚はしないとしても話し合いの結果を踏まえて別居期間中の取り決めをしておきたい場合もあります。
このような場合にも別居調停が利用されます。
取り決める内容としては、婚姻費用、子どもの監護権者、面会交流などが一般的です。
弁護士の中にも別居調停という言葉を知らない人や、別居調停において面会交流の合意ができるということを知らない人もいますので、是非このことを知っておいていただければと思います(調停調書に基づいて婚姻費用の強制執行をすることや、面会交流の定め方次第では間接強制も可能です)。
別居調停が成立する場合の調停調書の条項例の第1項は「当事者双方は、当分の間、別居する。」とか「当事者双方は、当分の間、別居を継続する。」などとするのが一般的です。
いつまで別居するかは分からず、将来的に同居となるのか、別居を継続して離婚となるのかは、別居調停の時点では誰にも分かりません。
したがって、「令和〇年〇月〇日まで別居する」などという条項は現実的ではなく「当分の間」といった表現が用いられることになります。
なお、上記では離婚調停の結果、当分の間別居するという話に落ち着いた場面での「別居調停」の使い方をご紹介しました。
このような離婚調停から別居調停へスライドするパターンが実務上は一般的ではありますが、一応、別居調停の申立てという概念もあります。
文献によると、「別居調停とは、夫婦の関係がこじれているような場合に、当分の間、別居して、夫婦のあり方を考え直すために、夫婦関係の調整として申し立てられるものです。(中略)同居している夫婦が他方に対して共同生活を営んでいる居宅から出て行ってもらいたいと別居を求めることもあります。」と紹介されています(秋武憲一『第4版 離婚調停』日本加除出版132-133頁)。
ただ、実際は別居を求めるだけの調停申立というのは極めて稀で、離婚を求めるべく離婚調停を申し立てるのが一般的だと思われます。
前述のとおり、別居調停は、単に調停を不成立にしてしまうのではなく、別居期間中の取り決めを調書の形で残すことができるという点で、時には有用となることがあります。
別居調停を成立させたいと思われた場合には、お一人で離婚調停をされているのであれば調停委員に打診してみるといいですし、弁護士に依頼しておられるのであれば弁護士に相談して見られるといいと思います(ただし、弁護士でも別居調停で何ができるのかを知らない人もいますので、その場合は婚姻費用、監護権者、面会交流等の取り決めができることを伝える必要があります)。