【大阪の離婚弁護士が教える】婚姻費用・養育費は、当月分を当月払いなのか翌月分を当月払いなのか
婚姻費用や養育費は毎月払いが原則です。
では、この毎月支払われる婚姻費用・養育費は、当月分を当月払いとするのか、それとも翌月分を当月払いとするのか、いずれが一般的なのでしょうか。
たとえば、前者であれば9月分の婚姻費用は9月中に払うことになりますし、後者であれば10月分の婚姻費用を9月中に払うということになります。
この点については、実務上は、前者つまり当月分を当月払いとするのが一般的です。
実際の裁判例を見てみると・・・
「支払期限は、毎月末日限り、当月分を支払わせるのが相当である。」としたもの(東京高決平成30年4月20日)や、「婚姻費用の支払期限は、当月分を毎月末日までに支払うこととするのが相当である。」としたもの(大阪家堺支審令和元年5月23日)などがあり、
当月分を当月払いとしていることが分かります。
とはいえ、当事者間で翌月分を当月払いにするという合意をすること自体は何も問題ありません。
ただ、そのような合意や認識のすり合わせをすることなく、翌月分を当月払いだという認識で支払っていると、後々認識のずれを原因としてトラブルが起きる可能性があるので注意が必要です。
たとえば、このような事案があったとします。
令和〇年1月1日に妻が家を出る形で別居を開始し、1月10日妻が夫に対して婚姻費用を請求しました。
1月31日に夫は妻に対して婚姻費用を支払い、翌月以降も毎月婚姻費用を支払い続けました。
その後、この夫婦は令和△年10月31日に離婚が成立することとなりました。
この事案において、夫は、翌月分を当月に払うという認識であったため、9月末に支払った婚姻費用が10月分の婚姻費用であると考え、これ以上の婚姻費用の支払いは必要がないと主張しました。
一方で、妻は、当月分を当月末までに払ってもらっているという認識であったため、9月末に受け取った婚姻費用は9月分の婚姻費用だと考え、最終月である10月分の婚姻費用を支払ってほしいと主張しました。
では、このいずれが妥当かというと、妻側の認識であろうと考えられます。
その理由は以下のとおりです。
婚姻費用は請求した月から当事者が離婚するまで発生するところ、上記ケースでは1月分から10月分までの合計10か月分の婚姻費用が発生しています。
仮に夫の言い分のとおりとすると、夫は9か月分しか婚姻費用を払っていないことになり、1か月分不足していることになります。
夫が最初の支払月(上記の例でいうと1月)に2か月分の婚姻費用をまとめて支払っていたというような事情があれば別ですが、そのような事情がなければ夫の言い分は適当ではないということになります。
これは養育費でも同様で、上記の例を令和〇年1月1日に離婚し、令和△年10月に養育費の支払終期が到来したと考えれば、同じ議論になるということがお分かりいただけるはずです。
家賃の支払いなどでは、翌月分を当月払いということがよくありますが、婚姻費用や養育費では当月分を当月払いとするのが実務上は一般的だということを知っておいていただき、後になって無用なトラブルが生じないようにしてもらいたいと思います。