【大阪の離婚弁護士が教える】面接交渉、面会交流、親子交流は違う?同じ?
1.面会交流と面接交渉
文献や裁判例において、「面会交流」という用語のほかに「面接交渉」という用語が見られることがあります。
また、インターネット上でも「面接交渉」という用語が使われていることを目にすることもあります。
そのため、一般当事者からすると、この2つの用語には何か違いがあるのか、場面によって使い分けがされているのかといった疑問を持つこともあるようです。
しかし、面会交流と面接交渉は、いずれも別居親が子どもと直接会ったり、手紙や電話などを通じて交流を図ったりすることを意味しており、2つの用語に違いはありません。
2.面接交渉から面会交流へ
以前は、面会交流について法律上の明文規定がなく、主に「面接交渉」という用語が使われていましたが、より理解しやすい用語として「面会交流」という用語が使われるようになりました
この点、平成21年5月に公表された論文に「家庭裁判所の実務では、事件名として『子の監護に関する処分(面接交渉)』という用語が定着しているが、一方で、子との交流を表すより理解しやすい用語として『面会交流』が広まりつつある」と記載されています(「面会交流審判例の実証的研究」判例タイムズ1292号5頁)。
この記載からすると、平成21年当時では、なお「面接交渉」という用語が実務では主に用いられていたことがうかがえます。
その後、平成23年に民法が改正された際(平成23年法律61号)に、民法766条1項に「父又は母と子との面会及びその他の交流」という文言が登場し、これより、「面会交流」という用語が広く用いられるようになりました(本山敦編著『逐条ガイド親族法-民法725条~881条-』日本加除出版(2020年)121頁)。
そして、面会交流という用語の意味については、「『面会』とは、実際に父又は母と子が会うことであり、『交流』とは、電話による会話や手紙の交換等、『面会』以外の親子の交際方法も含み『面会』を包摂する広い概念である」とする説明があります(『家事事件手続法下における書記官事務の運用に関する実証的研究-家事調停事件及び別表第二審判事件を中心に-』司法協会241頁)。
このように「面会」と「交流」を分けて定義づけする考え方もありますが、一般的には、「面会交流」という用語は、別居親と子どもが直接会うこと(直接交流)を指す意味で用いられることが多いように思われます。
3.面会交流から親子交流へ
以上のように、面接交渉から面会交流へと呼び名が変わり、実務上は面会交流という呼び名が完全に定着してい
しかし、昨今、この呼び名をさらに変える動きが出ています。
令和4年8月30日に開催された法制審議会家族法制部会第19回会議の議事録を見ると、「面会交流という言葉について様々な意見等ございますので、ここでは親子交流とさせていただいております。」との記載が見られます。
また、この会議の資料には「部会における議論の中では、「監護権」や「面会交流」等の用語についても検討が必要ではないかとの指摘がされた(ただし、これらの用語は現行の民法で直接に用いられているものではない。なお、試案において「親子交流」又は単に「(父又は母と子との)交流」と表現しているものは、従前の実務において「面会交流」等と呼ばれていたもの(民法第766条においては「父又は母と子との面会及びその他の交流」と規定されている)と同じものである。なお、この親子交流は、親と子が直接会う形で交流する方法のほか、電話やメール、手紙などの方法で交流することも考えられるが、この点についても従前の実務と同様である。)。」とあります。
そして、それ以降の法制審議会においては「親子交流」という用語が用いられるようになっています。
この流れを見るに、法制審議会家族法制部会にて、面会交流という用語を変えた方がいいのではないかという意見が出たことを受けて、親子交流という言葉を使おうということになったようです。
そのため、今後の民法改正では親子交流という用語になるのではないかと予想されます。
現に法務省のサイトは既に「親子交流(面会交流)」という表記になっています。
とはいえ、前記の会議資料からも明らかなとおり、「親子交流」も「面会交流」も意味は同じです。
ということで、面接交渉→面会交流→親子交流と呼び名は変わっていっていますが、指す意味は何も変わっていないということです。