【大阪の離婚弁護士が教える】離婚慰謝料のリアルな相場
こちらの記事で解説したとおり、離婚する際に必ずしも慰謝料が発生するわけではありません。
むしろ、不貞行為や暴力等がない事案では慰謝料が発生しないのが通常です。
では、離婚の際に慰謝料が発生するとして、その金額の相場はいくらぐらいなのでしょうか。
ネットの記事では100万円~300万円とか50万円~500万円などと書かれているものがありますが、これらは何らかの統計資料に基づくデータではないようです。
そこで、今回は東京家庭裁判所が公表しているデータに基づいて、離婚慰謝料の相場を探ってみたいと思います。
今回の記事を作成するに当たって参考にした論文は、片岡顕一「離婚訴訟の審理モデル感」ケース研究351号37-91頁です。
まず、平成24年4月から平成25年12月までの間に終局した事件を対象としたデータによると、離婚慰謝料の認容率は37%とされています。
このことから、冒頭で説明したとおり、やはり離婚慰謝料が必ず発生するわけではないことが分かっていただけると思います。
その上で、離婚慰謝料の最大金額は700万円、最低金額は10万円、平均認容額は153万円で、離婚慰謝料が認められた事件の多くが不貞及び暴力に関するものであったとのことです。
これは10年以上前のデータですが、では最近はどうなのでしょうか。
同論文によると、令和5年1月から令和6年3月における東京家裁家事6部において、離婚慰謝料を判断した事件が約43%(172件中74件)あり、慰謝料の認容率は約39%(74件中29件)であったとされています。
やはり現在でも、そもそも離婚慰謝料が請求された事案が全体の半数以下で、請求された事案においても認容率は約4割にとどまっていることから、離婚慰謝料が発生する事案の方がむしろ珍しいということがお分かりいただけると思います。
そして、認容額については、最大金額が150万円、最低金額が30万円で、平均認容額は約95万円であったとされています。
また、慰謝料が認容された事案の多くが不貞及び暴力に関するもの(29件中22件)で、その他には浪費や犯罪行為等を理由としたものであったとのことです。
この近年の統計データを見ると、最大金額でも150万円となっており、ネット上によくある相場の幅を見ておられる方からすると、やや少ないとお感じになるかもしれません。
この統計データはあくまで東京家裁第6部の限られた期間の統計ですから、どこまで一般化できるかという問題はありますが、根拠なく示された100万円~300万円などという数値よりも、実際のデータに基づいている分、リアルな数値といえるのではないでしょうか。
ちなみに、モラハラで慰謝料が発生するかというテーマについては、こちらの記事を参照ください。