【大阪の離婚弁護士が教える】離婚した後に元配偶者に離婚慰謝料を請求することができるか
1.はじめに
離婚と慰謝料の関係については、以下の記事で説明してきました。
・離婚するにあたって、慰謝料は必ず発生するわけではないこと→こちら
・モラハラで慰謝料が発生することは稀であること→こちら
・離婚に当たって配偶者に請求する慰謝料は「離婚慰謝料」とすることが多いこと→こちら
・離婚慰謝料の相場はいくらぐらいか?→こちら
これらのことを前提に、今回は離婚後に慰謝料を請求することができるかについて解説してみたいと思います。
2.離婚慰謝料の時効の起算点
離婚慰謝料の消滅時効の起算点は離婚時です(最判昭和46年7月23日民集25巻5号805頁)。
慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求であるところ、その時効期間は、損害及び加害者を知った時から3年です(民法724条1号)。
したがって、離婚した日から3年以内であれば、離婚慰謝料を請求することができるということになります。
ただし、冒頭に挙げた記事にあるように、請求できるからといって、必ず慰謝料が認められるわけではなく、むしろ訴訟においては離婚慰謝料が認容される割合の方が低い統計データすらあるという点には注意ください。
3.離婚時に財産分与を受けている場合でも慰謝料を請求することができるか
離婚する際に、財産分与として一定の金銭の支払い等を受けている場合、さらに離婚後に慰謝料を請求することができるのでしょうか。
この点に関しては、最高裁判例が存在します。
【最判昭和46年7月23日民集25巻5号805頁】
離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。もつとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方におけるいつさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべきである。そして、財産分与として、右のように損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合には、さらに請求者が相手方の不法行為を理由に離婚そのものによる慰藉料の請求の支払を請求したときに、その額を定めるにあたつては、右の趣旨において財産分与がなされている事情をも斟酌しなければならないのであり、このような財産分与によつて請求者の精神的苦痛がすべて慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて慰藉料の請求を認容することはできないものと解すべきである。しかし、財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するには足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一事によつて慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられないものと解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和二六年(オ)四六九号同三一年二月二一日第三小法廷判決、民集一〇巻二号一二四頁)は、財産分与を請求しうる立場にあることは離婚による慰藉料の請求を妨げるものではないとの趣旨を示したにすぎないものと解されるから、前記の見解は右判例に牴触しない。
つまり、基本的には離婚時に財産分与を受けていたとしても、別途離婚慰謝料を請求することはできるということになります。
ただし、財産分与に損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合で、これによって精神的苦痛が全て慰謝されたと評価される場合には、別途慰謝料請求が認められることはありません。
ということで、財産分与と慰謝料の請求を分けて行うと、財産分与に慰謝料的要素が含まれているか否かという点が争いになるおそれがあるため、よほどの事情がない限りは離婚時にあわせて請求した方がよいと考えられます。