【大阪の離婚弁護士が教える】戸籍上の夫婦であり続けるという選択肢

夫婦としての実態は全くなくなっているものの、離婚はせずに何年も別居し続けるという選択肢をとる夫婦がいます。

その理由は様々なようですが、子どものことや経済的なこと、世間体さらには心情的な面も関係しているようです。

互いに離婚はしなくてよいと考えているケースもありますし、一方は離婚したいと思っているものの他方が頑なに離婚に応じないというケースもあります。

後者のケースの場合、離婚したいと思っている側が有責配偶者であれば、確かに相当長期間の別居がなければ離婚することができません。

今回は、有責配偶者からの離婚請求の事案において、戸籍上の夫婦であり続けることが問われた裁判例を一つ紹介してみたいと思います。

 

【東京高裁昭和58年10月24日】

これは、32年にもわたって別居しているという事案です。

有責配偶者である夫は「控訴人と被控訴人との婚姻関係は三〇年前の控訴人の不貞行為と悪意の遺棄により破綻するにいたったが、三〇年の歳月の経過は、有責配偶者たる控訴人の厚顔無恥な行為を風化させ、もはや形骸化した戸籍上の夫婦が残っているに過ぎない状況であり、控訴人自身に積極財産のみるべきものがなく、被控訴人及び一郎ら三人の子において将来相続による利益を失う虞もないし、被控訴人とてすでに控訴人との夫婦関係の修復を望む気持など一片もなく、ただ意地を通し、控訴人に対し精神的報復を継続しているだけのことであるから、いわゆる有責配偶者であるとはいえ、控訴人の離婚請求は民法七七〇条一項五号を離婚原因とするものとして、これを認容すべきである」と主張しました。

これに対して、裁判所は次のように判断しました。

しかしながら、控訴人と被控訴人との婚姻関係の破綻の原因は挙げて控訴人の責に帰すべきものであること、及び控訴人の離婚請求は理不尽なものであるとして、被控訴人に離婚の意思が全く無いことは前判示のとおりであるから、控訴人の被控訴人に対する離婚請求はいわゆる有責配偶者からの離婚請求として棄却すべきである。控訴人の右主張は理由がなく、採用することができない。

 

このように、裁判所は、夫側の主張を一刀両断して、離婚を認めませんでした。

古い裁判例ということもあり、現在の裁判実務とは異なる点もありますが、興味深い裁判例ということで紹介させていただきました。

 

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