【大阪の離婚弁護士が教える】弁護士は依頼者に対し、子の監護・養育が適切にされるよう助言等をする義務を負うか?

弁護士は、依頼を受けた場合、その依頼の範囲内の業務に関しては、代理人として業務を行うことになります。

では、通常の離婚事件において、弁護士は依頼者に対して、その子どもをきちんと監護養育するように助言するなどの義務を負っているのでしょうか。

今回は、この点が問題となった珍しい裁判例(東京地判平成30年10月29日)を紹介してみたいと思います。

事案は、離婚した元夫婦の元夫が、元妻の代理人であった弁護士に対して、弁護士は元妻に対して、子らの監護・養育が適切にされるように,助言や助力等をして働きかけるなど、善良な管理者として最善の注意を尽くすべき義務があったにもかかわらず、弁護士はこの義務を怠ったとして、損害賠償請求をしたというものです(弁護士以外も被告になっていますが、ここでは割愛します)。

では、判旨を見てみましょう。

被告弁護士らが被告Y1の代理人として行った手続(前記前提事実(2))について,被告弁護士らが被告Y1から受任したのはあくまでも当該手続の対応であると解されるところ,訴外子らに対する監護及び養育の内容は,その専門的な知見をもって行う上記各手続の対応とは直接関係しないものである。また,被告弁護士らが上記各手続について委任契約上の善管注意義務(民法644条)を負うのは,委任契約の当事者である被告Y1との関係であり,上記各手続の相手方である原告との関係において,被告弁護士らが善管注意義務を負うとは認められない(仮に,上記各手続において,原告が被告Y1に対し,訴外子らに対する養育や教育の内容等につき釈明を求めていたとしても,このような原告からの一方的な要望により被告弁護士らが原告に対する善管注意義務を負うことになるとは認め難い。)。
したがって,被告弁護士らが,上記各手続の相手方である原告との関係において,訴外子らの監護や養育の内容につき依頼者に助言や助力等をして働きかけることを内容とする善管注意義務を負うとは認められないから,被告弁護士らが上記善管注意義務を怠ったことにつき不法行為が成立する旨の原告の主張は,その前提において理由がない。

ということで、この裁判例は、弁護士は依頼者に対して子どもの監護養育に関して助言や助力等をする義務まではないと判断しました。

 

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