【大阪の離婚弁護士が教える】婚姻を継続し難い重大な事由とは何か?~セックスレスの場合~
夫婦間の肉体関係がないことは、婚姻を継続し難い重大な事由の一事情となり得るのでしょうか。
今回は、性的不能によるセックスレスが問題となった裁判例を一つ紹介したいと思います。
【東京地裁平成16年5月27日判決】
(4) しかしながら、甲6の文面及び被告がバイアグラを服用していたこと(被告はその本人尋問でその事実を認めている。)に照らせば、婚姻後に勃起不全状態に陥り(但し、乙1によれば、その原因は器質性のものではなく、むしろ精神的なものにある可能性が高い。)、原告と性交渉を持てなくなったとの事実が認められる。
被告は、甲6について、原告の両親らに対し下手に出ることによって原告との離婚を回避しようとして前記のような文面になった旨主張し、乙12及び被告本人尋問においても同旨の記載又は供述をしているが、原告の両親らが甲6を閲読すれば、事態はかえって原告と被告との離婚を進める方向に向かうことが目に見えるというべきであって、被告の主張は到底採用できるものではない。
また、被告が性的不能状態に陥っていなければ、バイアグラを入手して服用する必要性がなかったはずであるのに、何故被告がそれを入手し服用したのかについて、合理的に説明がつくような事情は、証拠上全くうかがわれない。
なお、被告は、性交渉を持つことができなかったのは原告がこれを拒否したためであると反論するが、そのような事情をうかがわせる客観的証拠は全く見当たらず、この点に関する被告の反論は、採用できない。
(5) もっとも、被告が性的不能状態にあるという一事だけでは、原被告間に裁判離婚原因があると即断することはできない。なぜなら、その事実は被告の側にも困惑をもたらすものであって、妻である原告の側にも、夫婦相互扶助義務の一環としてある程度はその改善に寄与すべき義務があるといえるため、原告がその点についていかなる行動をとったかも問題にしないわけにはいかないからである。
もっとも、被告の性的不能に対する原告の態度も、その他の裁判離婚原因の存否とも絡めて検討する必要があるので、とりあえず、その点を判断する。
(6) 被告が生活費に関して事細かに気にしすぎており、それが原告に大いなる精神的負担をもたらしたとの点は、甲7及び13の各記載内容からうかがえるところの被告の性格からして、認定することができる。
また、被告は、原告との別居後、前記のとおり手紙及びファックスを原告及びその両親らに送り続けているところ、それらの文面は、一見、原告に対する愛情が示されているように見えるが、読む側からすれば、被告自身の感情を示しているだけであって、原告自身の立場をどのように尊重し、被告との婚姻関係を今後維持していこうという気持ちに傾かせるための具体的方策ないし具体的事情が全く示されておらず、原告らにすれば、かえって精神的に重荷を背負わされた感じを抱くものにすぎない。すなわち、これらの手紙及びファックスは、被告が、原告を手放したくないという一方的な感情を持ち続けていることを示すだけであって、夫の妻に対する愛情を示すものではなく、むしろ男が女を思うがままに支配したいという欲求を吐露しているにすぎない。そして、そのような感情を抱く被告と家庭生活を送り続けることが、原告にとって到底耐え難いものであることは、明白である。
そして、被告が、原告と同居中において原告に対してとり続けた態度も、これとほぼ同様に、原告に対する配慮を欠くものであったことが推認されるのであって、原告にとっては、被告に妻として愛されているという感情を抱くことができず、単に日常生活における身の回りの世話をする女性(原告はそれを「家政婦同様の扱い」と称したものと理解できる。)としか見られていないという感情を抱くに至ったものと考えられ、原告からすれば、そのような被告と婚姻生活を維持することは、耐えられなくとも当然といえる。
(7) ところで、原告は、被告との婚姻生活において性交渉の欠如を裁判離婚原因として主張してはいるが、証拠上認められる被告の性格及び原告に対する生活態度に照らすと、その主張は、肉体的なつながりを問題としているよりはむしろ、性交渉を通じて夫である被告との精神的つながりをより深めることにより、幸福な家庭生活を営みたいという原告の希望を、被告が全く叶えようとしないことを、より物理的にかつ明確に主張しようとしたものと理解できる。そうすると、被告の性的不能の点と、被告の性格及び原告に対する生活態度の点とは、区別して考えるべきものではなく、全体を一括して検討、評価すべきものといえる。
本件の場合、原告が、被告の性的不能状態に対し妻としてどの程度その改善に向けて寄与ないし努力をしたかについては、証拠上今一つ判然としない。しかしながら、仮に原告による寄与ないし努力がほとんど見られなかったとしても、原告が被告に対して有する感情が極めて悪い状況にあることは証拠上明らかであって、それ故に、原被告間の婚姻関係は完全に破綻していると認められること、そして、その原因は、被告の前記のような性格に加えて、被告が、原告を妻として処遇するには配慮を欠く生活態度を見せ続けたことにあることもまた認定できるのであって、もはや、原告が被告の性的不能の改善に寄与ないし努力をしたか否かを問題にする必要はないといえる。
(8) 以上の点を総合的に考慮すれば、原被告間には、婚姻関係を継続し難い重大な事由が存すると認められる。
この裁判例では、性的不能という一事だけで、離婚原因となると即断できないとしつつも、その他の事情を全体的に考慮して離婚を認めました。
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