【大阪の離婚弁護士が教える】婚姻を継続し難い重大な事由とは何か?~配偶者への嫌がらせがあった場合~
配偶者に対する嫌がらせ的な行為があった場合、婚姻を継続し難い重大な事由の一事情となるのでしょうか。
今回は、この点が問題となった裁判例を一つ紹介します。
【千葉家裁松戸支部平成25年10月8日】
1 甲1ないし30,35,乙2ないし5(以上枝番を含む)及び原告ら及び被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 原告X1と被告の夫婦は,平成元年4月から,原告X2及び原告X3と府中市で同居したが,平成2年3月には同居を解消して日野市に住むようになり,平成8年になって,再び原告X2夫婦と新築した別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という)で同居(但し,二世帯住宅であり,原告X2夫婦は1階,被告家族は2階に居住)するようになった。
(2) 本件建物の敷地である別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という)は,原告X2が3000万円で購入した原告X2単独所有の土地であり,本件土地上の本件建物は,原告X2と被告がそれぞれ資金を出し合って建築した(原告X2・1854万円,被告1500万円)もので,拠出金に応じ,本件建物の持分登記は,原告X2が7分の4,被告が7分の3とされた。
(3) 被告は,本件建物に住むようになった平成8年ころまでは化学メーカーに勤務していたが,その仕事を辞めた後は再就職先が見つからず,現在まで定職に就いていない。それでも被告は,平成22年8月ころまで,投資で得た利益や相続財産などを原資として,原告X1に生活費を渡していた。
(4) 被告は,平成8年ころ以降,定職に就かず,時間を持てあましていることもあって,原告X1の行動を常時監視するようになった。また,被告は,原告X1と原告X2らが接触するのを嫌い,それを防ぐため,原告X1が外出する際には,玄関先まで付いて行くことを日常的に行っていた。原告X1は,このような被告の行動に強いストレスを感じ続けていた。
(5) 被告は,平成15年ころ,原告X1の言い方に腹を立て,その腹部を拳で殴打したことがあった。
(6) 平成22年8月ころ,被告は原告X1を消費者金融の窓口に連れて行き,原告X1に30万円を借りさせ,これを自分の投資のために使った。原告X1は,その際の被告の強引なやり方に愛想を尽かし,離婚を決意した。
(7) 被告と原告X2及び原告X3との関係は,平成元年に同居していたころから,円満とは言いがたく,平成8年の再同居開始以降は険悪となり,互いに会話を交わすことも全くない状態となった。
(8) 被告は,遅くとも平成16年ころ以降,原告X2及び原告X3に対し,様々な常軌を逸した嫌がらせ行為を継続するようになった。即ち,被告は,毎日のように原告X2宅の玄関前や窓などに大量のつばを吐きかけ,また,一日に何回も2階の床を強く(階下の蛍光灯が壊れたり,飲んでいるお茶をこぼすほど強く)蹴りつけた上,原告X2の植木にいたずらをしたり,原告X2夫婦の郵便物を勝手に抜き取って処分したり,屋外に設置された湯沸かし器を壊したり,深夜に無言電話をかけたりした。
(9) 被告は,平成18年6月ころ,原告X3の腹部をいきなり殴打した。また,被告は,同年12月ころ,原告X2ともみ合いになった際,原告X2の首を絞めた上,その指に噛みついて同人に怪我を負わせた。
(10) 平成23年3月,原告X1は離婚調停を,原告X2及び同X3は離縁調停を,それぞれ被告を相手方として申し立てたが,各調停は同年6月に不成立となった。被告は,各調停が申し立てられた以降,原告X2夫婦に対しそれまでのような過激な嫌がらせは行わなくなった(但し,全くやめたわけではなく,現在も一部行っている)。
2 離婚,離縁及び慰謝料について
上記1で認定した事実によれば,原告X1と被告の夫婦関係は,平成8年ころ以降,被告が,仕事に就かず,原告X1に対し,その行動を監視して束縛した上,暴力を振るったり,意に反して借金をさせたり,その両親に対して常軌を逸した嫌がらせを継続したりしたことにより,原告X1が被告に愛想を尽かし,遂に破綻したものと認められる。したがって,原告X1の離婚請求及び慰謝料請求は理由がある。
この裁判では、裁判所は被告(夫)の行為を「常軌を逸した嫌がらせ」と断じた上で、原告(妻)からの離婚請求を認めました。
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