【大阪の離婚弁護士が教える】婚姻を継続し難い重大な事由とは何か?~配偶者への暴力があった場合~

一方配偶者から他方配偶者への暴力があった場合、婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる傾向があります。

今回は、暴力が原因となって離婚が認められた裁判例を一つ紹介してみたいと思います。

 

【東京家判平成23年4月26日】

①認定された事実

オ 原告は,平成11年4月に被告との間の子を妊娠していることが判明したが,同年5月に流産してしまった。被告は,このころから,夜間に床や壁を叩き,原告を怒鳴り散らすようになった。
 原告は,平成11年6月,一人で,被告の母をその兄が居住する北海道に連れて行った。原告は,被告が就労しないことや被告の母の扱いに被告が非協力的であることなどに強いストレスを感じていたが,被告は相談に乗ってくれなかった。
   カ 原告が,本件土地建物の住宅ローンを金利の低いものに借り換えるという目標を示して被告に働き掛けたところ,被告は,平成11年11月,派遣の工員として就労するようになった。
 原告は,銀行を回って,好条件のローンを見つけることができた。そこで,平成12年12月,住宅ローンの借換えを行った(これにより,年利6ないし8パーセント程度であった住宅ローンの金利は,年利3パーセントを下回るところまで低減された。)。その際,被告に加えて,原告も連帯債務者となった。
 しかし,被告は,住宅ローンの借換え後,間もなく,会社の規模縮小に伴う派遣契約の打ち切りにより失業した。その後,被告は,寝言や,深夜に床を叩いたり壁やタンスを蹴飛ばしたりするといった行動を激化させていった。
   キ 原告は,平成13年9月,限界を感じ,本件土地建物を出て,東京都練馬区の実家(現住所)に転居した。
 転居後,原告の妹も交えて,被告と話し合ったところ,被告から懇願されたため,原告は,平成13年10月に本件土地建物に戻った。しかし,その後も,被告は就労しなかった。
   ク 平成17年1月,被告が突然暴れ出し,原告の妹夫婦を交えて話し合いをした。
 被告は,このころから,物を投げるようになり,原告が制止すると,興奮して怒鳴るようになった。平成17年1月には,原告に対し,居間の入口に掛かっている暖簾を外すよう怒鳴るとともに,原告を壁に押し付けて首を絞める暴行に及んだ。
 原告は,この暴行を受け,被告と一緒にいることに身の危険を覚え,実家に避難することを考えたが,被告が精神面の問題から,自殺するのではないかという不安に駆られ,行動に移すことができなかった。
   ケ 原告は,平成17年2月,夫婦双方に精神面で問題があると感じ,被告とともに心療内科を受診した。被告はうつ病,原告は適応障害とそれぞれ診断され,服薬することになった。
 原告と被告は,しばらくの間,通院を継続していたが,原告は,夫婦の問題を解決することが自身の適応障害に対する最善の解決策であると考え,通院を中止して,八王子市内の夫婦間暴力に関する相談に通うようになった。被告も間もなく通院を中止した。
   コ 平成18年12月,被告の母が死亡した。原告は,これを契機として,被告と離婚することを決意した。
 原告は,北海道において,被告の母の葬儀を終えたところで,10人程度の親戚を前に,被告に対し,離婚届を示して離婚を申し出たが,被告は承諾しなかった。
 原告は,北海道から,練馬区の実家に帰った。
 原告は,平成18年12月,父及び妹夫妻とともに,話し合いのために,本件土地建物を訪れたが,練馬区の実家に戻って被告と別居することとなった。以後,現在まで別居が継続している。
   サ 原告は,平成21年9月に東京家庭裁判所立川支部に離婚を求める調停を申し立てたが,平成22年5月27日,不成立により終了した。
 原告は,平成22年8月9日,当庁に対し,本件訴訟を提起した。

②裁判所の判断

 (2) 以上の事実によると,原告と被告との婚姻関係は,二度の別居を挟みながらも,経済的な面においても,あるいは,心理的な面においても,原告の献身的な貢献により継続されてきたものであったが,被告が十分な就労意欲を有さず,また,家庭内の問題について原告を援助したり,真摯に話し合ったりする姿勢を示さなかったことなどから,次第に形骸化している。それと当時に,平成11年5月ころから被告による暴言・暴行が始まり,平成17年1月ころからは,それが激しくなっていたことなどから,原告の精神的な負担が一層重くなっていき,原告は,離婚を意識するようになっていたが,被告の母が平成18年12月に死亡したことを契機として離婚を決意し,その後,完全な別居状態が継続するようになるとともに,原告においてますます離婚を望むようになっている。そして,原告と被告との別居期間が4年を超えるとともに,原告が離婚を求める調停を申し立て,さらに本件訴訟を提起するに至っていることなどからすると,原告と被告との婚姻関係は,もはや回復の見込みがない程に破綻しているというべきである。
  (3) また,上記のとおり,原告と被告との婚姻関係は,原告による献身的な貢献によって支えられてきたものであったが,被告が一方的にそうした関係を害したばかりか,暴言又は暴力などに及んで破綻させるに至ったものである。
 このように,破綻の原因がもっぱら被告の側にあり,その経過は原告にとって不合理というほかないものであることからすると,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,本件離婚に関する慰謝料の損害賠償責任を負うというべきである。そして,原告と被告との婚姻期間,婚姻の破綻に至る経緯,破綻の原因となった被告の言動の内容など本件離婚に関する一切の事情に照らすと,離婚に伴う原告の精神的な苦痛に対する慰謝料は150万円とするのが相当である。

 

このように判断して、裁判所は、被告(夫)の暴力を認定して、離婚と慰謝料150万円を認めました。

 

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