【大阪の離婚弁護士が教える】婚前契約・夫婦財産契約の条件や内容
1.夫婦財産契約を締結するための条件
結婚する前にパートナーとの間で契約を交わすというケースは滅多にないと思われますが、婚前契約・夫婦財産契約は、民法に規定されており、公序良俗に反するなどの事情がない限りは、有効な契約です。
民法755条は「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。」と規定されています。
この規定からは、婚姻前に契約をすることが民法上許容されていること及び夫婦財産契約を締結するのは婚姻前でなければならないことが分かります。
さらに、民法756条には「夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。」とあり、夫婦財産契約を第三者に対抗するためには登記が必要とされています。
つまり、登記をしなくても当事者の間では有効な契約となりますが、第三者には対抗できないということになります。
民法758条第1項には「夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。」とあり、原則として夫婦財産契約は結婚後後には変更することができないことが分かります。
ただし、夫婦財産契約の中に変更について規定している場合や、夫婦の一方の財産管理に問題がある場合にはその管理の変更を求めることが可能です(民法758条2項)。
2.夫婦財産契約が利用されていない実態
夫婦財産契約はほとんど利用されていないといわれています。
過去5年の夫婦財産契約が登記された件数は、以下のとおりとなっており、その数の少なさが見て取れます。
2023年:23件
2022年:39件
2021年:21件
2020年:22件
2019年:16件
(政府統計の総合窓口より)
このように夫婦財産契約の利用が低調にとどまっている理由としては、そもそもそのような契約類型があることを知られていないこと、結婚前に離婚を前提としたような契約をすることに抵抗があること、一度契約してしまうと原則として変更できないという点への抵抗感などが考えられます。
3.夫婦財産契約の内容
契約自由の原則(民法521条)がありますから、夫婦財産契約の内容は当事者同士が自由に決めて構わず、公序良俗に反するなどの事情がなければ有効な契約となります。
具体的には、婚姻時に存在する財産が夫婦のどちらの固有財産なのか、婚姻中に取得した財産が夫婦のどちらに帰属するのか又は共有とするのか、財産の管理・処分をどうするのか、婚姻中に発生した債務を夫婦のどちらに帰属させるのか・どのように負担していくのか、婚姻中の生活費等の負担をどのようにするのか、離婚する際の財産の清算をどのようにするのかなどについて取り決めることが考えられます。
4.夫婦財産契約に対する批判
夫婦財産契約、特に離婚の際の財産分与を定額化する事前の取り決めについては次のような批判があります。
財産分与は、婚姻解消後、すなわち婚姻解消によって夫婦財産契約が効力を失った後の問題であり、財産分与において、夫婦財産契約の内容を考慮した公平な清算を行うこととすべきである。財産分与における生産方法を、特に定額の支払という方法で定めることは、離婚の意思を制限することになりかねず、また、婚姻中の財産関係の変化の可能性を考慮すれば、公平な結果をもたらすとはいえず、認められるべきではない。
(松本哲泓『離婚に伴う財産分与-裁判官の視点にみる分与の実務-』新日本法規11頁)
☆夫婦財産契約に関連する裁判例をお知りになられたい場合は、こちらの記事を参照ください。