【大阪の離婚弁護士が教える】夜間に男女が二人で自宅にいることは不貞行為を推認させるか
不貞行為が問題となる事件において、一方当事者の自宅に不貞相手が出入りしているところを写した写真や動画が証拠として提出されることがよくあります。
では、男女が自宅に二人でいるという事実は、不貞行為つまり性行為を推認させるのでしょうか。
今回はこの点が問題となった裁判例を一つ紹介したいと思います。
【東京地裁平成30年2月15日判決】
ア 被告とAは,平成28年7月6日午後8時頃から午後10時頃まで,本件レストランにおいて,二人で飲食をした上で,コンビニエンスストアやペットサロンに寄りつつ,二人で被告宅マンションに向かい,同日午後10時過ぎから翌7日午前3時30分頃までの間,被告宅マンションにおいて,二人で過ごしている(前記第2.2(3),弁論の全趣旨)。
このように,大人の男女が,単に夕食を共にするというにとどまらず,更に,午後10時過ぎ頃から翌日午前3時30分頃までという深夜の時間帯に,一方の居宅において二人きりで過ごすということは,現在の我が国における健全な社会常識に照らすと,相当に濃密なプライベート領域の共有というべき事態であって,節度のある知人間又はビジネス上の付き合いの一環として説明することが通常困難な事態といえるから,特段の事情がない限り,同事実は,両者が家族,恋人又はこれと同等の関係にあることを推認させるものというべきである。
イ もっとも,被告は,Aから開店予定の飲食店の事業運営に関する相談を受ける過程で,自宅マンションで保管する日本ワインを試飲しながら上記相談に応じるため,Aを自宅マンションに招いただけであると説明するので,被告の上記説明がアの特段の事情の存在につき合理的な可能性を生じさせるものといえるかについて検討する。
この点,被告の上記説明を前提としても,Aからの相談にさほどの緊急性があるとはいえず,夕食の機会に相談に乗るだけでなく,更に深夜の時間帯にわたり自宅において二人きりで相談に乗らなければならない高度の必要性があったとはいえないし,仮に,助言の実を上げるため,ワインの試飲が必要であったとしても,節度ある関係を前提とすれば,近い日程でそのための別の機会を設ければ足りるものといえる。
しかも,Aは,当時,結婚指輪をはめる指である左手の薬指に指輪を装着しており,同指輪は数メートル先からも視認可能なものであったことからすると(前記第2.2(4)),被告において,Aとともに被告宅マンションに向かうに当たり,当該指輪に気付いていなかっただとか,仮に指輪に気付いてもAが既婚者である可能性すら認識できない状態であったなどということはあり得ず,これに反する被告本人の供述は信用できない。そして,このことを前提とすれば,緊急性もないのに,ワインの試飲等のため,深夜の時間帯に自宅マンションに既婚女性と同道して5時間以上にわたって二人きりで過ごすというのは,健全な社会常識から逸脱する行為であり,これを単なる知人間又はビジネス上の付き合いの一環として説明することは困難である。
そのため,被告の上記説明はアの特段の事情の存在について合理的な可能性を生じさせるものとはいえない。
ウ そうすると,被告とAが平成28年7月6日午後10時過ぎから翌日午前3時30分頃までの間に被告宅マンションにおいて二人きりで過ごしたことは,被告とAとの関係が家族や恋人と同等の関係に基づくものであったことを推認させるものというべきであり,そうした両者の関係性を前提とすると,その間,被告とAとの間に不貞行為があったこと(以下「本件不貞行為」という。)も推認されるというべきである。
以上のとおり、この裁判例を前提とすると、男女が一方当事者の自宅にて一夜を共にしたという事実がある場合、特段の事情がない限りは不貞行為があったことが推認されると考えられます。
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