【大阪の離婚弁護士が教える】内縁配偶者は財産分与を請求することができるか?
内縁関係にある当事者が、関係を解消するに当たって、通常の婚姻関係にある夫婦と同じように、一方当事者が他方当事者に対して財産分与を求めることができるのでしょうか。
内縁に関して、最高裁は「いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。」と判断しています(最判昭和33年4月11日)。
つまり、内縁関係も婚姻関係に準ずると判断したわけです。
その結果として、内縁関係についても、財産分与に関する民法768条を類推適用するというのが実務の考え方です。
そのため、内見関係にある当事者において、財産分与が問題となる事案では、そもそも内縁関係にあったのか否かが争点になることがあります。
この点が争点になった裁判例を一つ見てみることにします。
【福岡家審平成30年3月9日】
2 争点1(内縁関係の成否)について
(1) 上記認定事実に照らすと,申立人と相手方は,約3年間の男女交際を経て,平成7年5月頃から相手方の当時の自宅で同居を開始し,新居への転居を経て,平成25年11月頃まで同居生活を継続している。
また,上記同居期間中,申立人と相手方は,双方の子や孫,親族らとも交流があったほか,a会に所属して一緒に活動を行い,旅行等にも赴くなどしている。
さらに,申立人,相手方及び同人の子らとの間で協議が行われた平成25年10月頃までは,一時的な喧嘩等を除いて,申立人及び相手方の関係に大きな問題があったことを窺わせるような事情も見当たらない。
上記事実関係等に照らすと,申立人と相手方の関係は,夫婦関係に相当する社会的実体を備えていたと評価すべきであって,申立人と相手方との間には,同居を開始した平成7年5月頃から,申立人が自宅から完全に退去した平成25年11月22日まで,内縁関係が成立していたと認めることが相当である。
(2) これに対して,相手方は,申立人と相手方の交際は,遅くとも平成6年頃には終了しており,その後は申立人を仕方がなく自宅に住ませていただけであるなどと主張しているが,一件記録を検討してみても,上記事実関係を認定するに足りる証拠は認められない。
さらに,申立人と相手方の生活状況等を踏まえると,相手方から申立人に対して同居中に交付されていた15万円は,申立人の生活費等に費消されることを念頭としたものと評価すべきであり,また,関係証拠(甲3ないし5,甲7,甲9ないし11)に照らすと,上記同居期間中に,申立人及び相手方がそれぞれの親族らと一定の交流を持っていたことも明らかであるから,これらの点に関する相手方の主張も採用できない。
(3) 以上の検討によれば,申立人と相手方は,平成7年5月頃から平成25年11月22日まで内縁関係にあったと認められる。(中略)
4 争点3(分与割合)について
(1) 申立人と相手方の関係は内縁にとどまるものの,これまでに認定した一切の事実関係を踏まえると,申立人は,相手方と約18年半もの長期間にわたって生活を共にし,この間,家庭内において家事等に従事していたのであるから,申立人は,内縁関係の終了に伴い,相手方から相応の財産分与を受けることができる立場にあるというべきである。
(2) 他方で,別紙一覧表記載の申立人及び相手方の財産状況のほか,一件記録から認められる相手方のその他の財産の状況等も踏まえると,相手方は,申立人との内縁関係の成立以前から,相当多額の資産を保有していたと認められる。これに対して,申立人は,相手方との同居前に破産申立てに及ぶなどしていることに照らすと,内縁関係の成立時点においては目立った資産を持ち合わせていなかったと認められる。
これに加えて,相手方は,アミューズメント施設の経営や不動産賃貸業を営む株式会社の代表取締役として,長年にわたって同社の経営に携わっていたことなども踏まえると,申立人及び相手方の分与対象財産の形成及び増加等については,相手方の保有資産及び社会的地位等による影響や寄与が相当程度あったと認められる。
(3) 上記事情のほか,申立人及び相手方の主張内容並びに一件記録から認められる一切の事情を考慮すると,分与割合については,申立人が3分の1,相手方が3分の2と認めることが相当である。
5 結論
(1) 以上の認定によれば,申立人と相手方が保有する分与対象財産の合計額は9170万4880円(申立人名義・管理の資産1110万3708円と相手方名義・管理の資産8060万1172円の合計額)であるところ,上記認定した分与割合(申立人3分の1,相手方3分の2)を踏まえると,上記総財産額のうち申立人が取得すべき金額は3056万8293円となり,同金額から申立人名義・管理の資産を控除した金額は1946万4585円となる。
(2) そして,その他に本件における一切の事情を考慮すると,相手方から申立人に対して,財産分与として1947万円の支払を命じることが相当である。
この裁判例では、内縁関係にあったことを認めた上で、分与割合を1:2としている点が特徴的です。
抗告審に当たる福岡高決平成30年11月19日も結論において同旨の判断をしています。
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