【大阪の離婚弁護士が教える】共同親権・条文解説⑦~すでに離婚している場合はどうなるのか?~

1.共同親権制度の適用範囲

すでに離婚している当事者にも共同親権制度が適用されるのでしょうか、それとも改正民法施行後に離婚する人のみに適用されるのでしょうか。

この点に関して、法務大臣は次のように説明しています。

親権者変更の申立ては、子の利益のために必要がある場合に認められます。当然、事案によっては父母双方を親権者に変更することが子の利益になる場合もあり、既に離婚して単独親権となっている事案について、そのような変更の申立てそのものを認めないとすることは相当ではないと考えられます。
(第213回国会衆議院法務委員会議録第6号)

現在の単独親権制度のもとで離婚した人であっても、改正民法の施行後は、共同親権への親権者変更の申立てができるということです。

共同親権にしたいのであれば親権者変更の申立て行う必要があり、自動的に共同親権になるわけではありませんので、その点は誤解のないようにしてください。

2.親権者変更の申立てにより共同親権となる場合/ならない場合

親権者変更に関しては改正民法に次のように規定されています。

【改正民法819条6項以下】
(前略)
6.子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
7.裁判所は、第2項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
 一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
 二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第1項、第3項又は第4項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
8.第6項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第1条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

これらの規定を見ると分かるとおり、共同親権にすべく親権者変更の申立てをしたとしても、必ず共同親権になるわけではありません。

親権者変更の裁判において考慮される事項は、第7項と第8項に記載されていますが、第7項については離婚時の親権者指定と共通する事項であり、以前の記事で説明していますので、そちらを参照ください。

第8項は親権者変更に固有の規定ですが、親権者を一方に定めた際の協議の経過やその後の事情の変更等を考慮し、協議の経過に関しては暴力等の有無や調停等を利用の有無などを勘案するとあります。

親権者変更に関して政府の説明を見てみると、法務大臣は次のように説明しています。

本改正案は、親権者変更の裁判において考慮すべき事情や単独親権を維持しなければならない場合については、親権者指定の場合と同様としております。そのため、DVや虐待の場合のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合には、親権者を父母双方に変更することはできないことになります。
以上述べたことを踏まえ、あくまで一般論としてお答えをすると、親権者変更の判断においては、親権者変更を求める当該父母が養育費の支払いのような子の養育に関する責任をこれまで十分果たしてきたかも重要な考慮要素の一つであると考えられます。
したがって、別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられます。

(第213回国会衆議院法務委員会議録第6号)

また、政府参考人は次のように説明します。

親権者変更の申立てでございますが、先ほど申し上げましたとおりでございまして、子の利益のために必要がある場合に認められるものでございまして、裁判所がその判断をするに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとされております。
これらを踏まえまして、あくまでも一般論としてお答えをいたしますと、本改正案では、父母相互の人格尊重義務や協力義務の規定を新設しておりまして、この義務を遵守してきたかも親権者変更における考慮要素の一つであると考えられます。
その上で、父母の一方の言動が父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反したものと評価されるかということにつきましては、個別の事案において、そのような言動をした理由や背景事情等の様々な事情を踏まえた上で判断されるべき事項であると考えております。
(第213回国会衆議院法務委員会議録第6号)

以上をまとめると、次のようなことがいえると思われます。

①DVや虐待など父母が共同して親権を行うことが困難である場合には、親権者を父母双方に変更することはできない
②別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたなど子の養育に関する責任をこれまで十分果たしてこなかった場合には、親権者変更が認められない方向に大きく働く事情となる
③父母相互の人格尊重義務や協力義務を果たしてきたか否かが親権者変更の際の考慮要素の一つとなる
 ※人格尊重義務・協力義務違反の例については以前の記事を参照ください。

☆共同親権に関する疑問点まとめ

・今後離婚する人は全員共同親権になるのか?

・夫婦の協議で共同親権にするか、単独親権にするか決まらなかった場合はどうする?

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・裁判所が共同親権にするか、単独親権にするかを判断する際、原則はどちらにするのか?

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・夫婦(父母)が別居している事案において、裁判所が共同親権と判断するのはどういった場合か?

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・共同親権とした場合、子どもはどちらの親と暮らすことになるのか?

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・共同親権であっても単独で親権を行使できるのはどのような場面か?

・共同で親権を行使しなければならない事項について意見が対立したときはどうするのか?

・共同親権と監護権の関係性とは?

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・現行制度と同様、親権者が決まるまで離婚することはできないのか?

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・共同親権とした場合、子どもの姓はどうやって決めるのか?

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