【大阪の離婚弁護士が教える】元妻の再婚によって面会交流が制限された事例①
前回の記事では、再婚しても面会交流が認められた事例を紹介しました。
今回は、反対に再婚後に面会交流が制限されるに至った事例を紹介します。
【横浜家裁平成8年4月30日審判】
ところで、婚姻中の父母は、共同して未成熟子の監護教育に当たるが、離婚後にあっては父母のうち親権者となった親(以下「親権者親」という。)のみが子の監護教育に当たることにならざるを得ないところ、子の福祉という見地からは、父母のうち監護教育を担当しない親(以下「非親権者親」という。)も、可能な限り親権者親による未成熟子の監護教育に協力することが重要であり、このため、非親権者親と未成熟子が接触・交流の機会を持つことが望まれることから民法上明文の親定はないけれども、子の監護に関する処分の一環として離婚後の非親権者親による未成熟子との面接交渉が肯定されているところである。しかし、この面接交渉の目的及び性格からすると、その実施によって子の心身の成長上好ましい結果がもたらされる場合でなければ、これを肯定すべきではないといってよく、特に、離婚に至った原因・経緯等から父母間の対立が激しく、親権者親が非親権者親による面接交渉に強く反対している場合にあっては、親権者親の意思に反する面接交渉が強行されることにより親子間に感情的軋轢等が生じ、これによって子の福祉を害する事態が想定されることから(とりわけ、未成熟子が低年齢であるとか、心身に障害をもっているとかいった場合には、親権者親の協力なしには円滑な面接交渉が事実上不可能であるため、親権者親の意思に反する面接交渉を強行することによってもたらされる不利益が大きい。)、親権者親の意思に反した面接交渉は、例えば、進学問題など、子の監護教育上親権者親が非親権者親の協力も得て解決すべき重要な問題が発生しており、これに適切に対処するには親権者親の意思に反しても非親権者親に子と面接交渉させるのでなければ子の利益を十分に保護することができないといった、特別の事情が存在すると認められるときでない限り、これを回避させるのが相当であるといえる。もっとも、子の年齢、その他心身の成長状況からして子が単独で非親権者親と面接交渉することが可能である場合にあっては、親権者親が反対であっても、面接交渉によって子の福祉が害されるおそれは比較的少ないといってよく、非親権者親が不当な動機に基づき面接交渉を求めているような場合を除き、原則としてこれを肯定することができる。
これを本件についてみるに、相手方麻依子は、申立人と離婚した後、相手方栄光と再婚しており、離婚の経緯からすると、相手方麻依子が面接交渉の機会に申立人と対面することを避けたい心情であることは理解しえないではなく、その後相手方栄光と和広及び市子が養子縁組をし、双方間に新たに親子関係が形成され、現在未成年者らが安定した生活を送っているとみられることからすれば、実父として我が子の無事な成長ぶりを確認したいという理由だけでは、相手方らの反対の意向にかかわらず申立人の面接交渉を認めることが子の福祉を図るうえで必要不可欠な要請であるとまでは認め難い。そして、市子の場合、まだ小学4年生であり、十分な分別心をもっていないとみられ、市子単独で申立人と面接交渉させることには疑問が残る上、市子の年齢、心情等からすると、面接交渉の内容・態様いかんによっては心理的な動揺や混乱を招くおそれがあると認められるところ、先に認定した事情の下で相手方らの協力がなくとも申立人と市子の面接交渉を肯定するのでなければ子の利益を保護するに十分でないというべき特別の事情が存在するとまでは認められない。これに対し、和広の場合、既に中学2年生であり、相手方らの協力がなくても単独で申立人との面接交渉が可能であり、申立人と相手方麻依子の離婚やその後の相手方同士の再婚につき未成年者なりにその事情を理解できる年齢に達しているとみられることのほか、申立人が面接交渉を求める理由が前記のとおり我が子の無事な成長ぶりを確認したいというものであって、親子間における自然の心情として理解しえないものではないことからすれば、申立人の求める年1回程度の面接交渉によって子の福祉を害する結果を招くに至るとまでは認められない。そうであれば、申立人が和広との面接交渉を求める申立ては理由があり、本件にみられる諸般の事情を考慮すると、平成8年5月1日以降毎年1回和広の通学先の学校における夏季休暇中に1日間面接交渉させるのが相当であるが(その具体的な日時、場所及び方法については、申立人が和広の意向を踏まえて定めるべきものである。)、市子との面接交渉を求める申立ては却下すべきものである。
この裁判例では、中学2年生の長男とは年1回の面会交流が認められたものの、小学4年生の長女との面会交流は認められませんでした。
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