【大阪の離婚弁護士が教える】不貞相手との間の違約金を高額にしすぎることのリスク
前回の記事で、不貞相手との間で合意書に違約金条項を入れることがあり、こうすることで抑止力になり得ると説明しました。
では、抑止力に期待して、とにかく違約金の額を高額にすると、どうなるのでしょうか。
今日はこの点が問題となった裁判例(東京地判平成25年12月4日)をご紹介します。
この事案においては、「①今後,Aに会うことはもちろん,一切の電話・メール・手紙・面会等で連絡をとることはしない。職務上においても必要最小限以外のコンタクトをとらないことを約束する。②万が一違反した場合には,別途違約金として1000万円を支払う。」という合意がされていました。
しかし、この合意に反する行為があったことから、1000万円の違約金を請求したところ、不貞相手側から上記違約金条項は公序良俗に反して無効だという反論が出されました。
裁判所の判断は次のとおりとなりました。
3 本件違約金条項は公序良俗に反するか(争点3)について
前記1の説示のとおり,本件違約金条項は,面会・連絡等禁止条項の違反について,違約金を課すものであると認められるところ,違約金は損害賠償額の予定と推定されるから(民法420条3項),その額については,面会・連絡等禁止条項が保護する原告の利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有し,著しく合理性を欠く部分は公序良俗に反するというべきである。
そこで検討すると,面会・連絡等禁止条項は,被告にAとの不貞関係を確実に断ち切らせ,原告の精神的安定を確保し,Aとの婚姻関係を修復するという正当な利益を保護するためのものであって,その目的は正当であると認められる。そして,原告本人の供述によれば,原告としては,面会・連絡等禁止条項の履行を確保することが,本件違約金条項を定める大きな目的だったことが認められるが,上記正当な目的を有する面会・連絡等禁止条項の履行を確保するために,その違反行為に違約金を定めることも,上記目的を達成するための必要かつ相当な措置であると認められる。
しかしながら,本件違約金条項による違約金額1000万円は,メールや面会等による接触にとどまらず不貞関係にまで至った場合に認められる損害額(後記4(3)のとおり)に照らすと,損害賠償額として著しく過大であるというほかない。
なお,原告本人の供述によれば,原告が本件において違約金の額を1000万円と設定したのは,原告において事前にインターネットで調べたところ,慰謝料の2倍から3倍を違約金として定めるのがいいと書かれていたからである。しかしながら,慰謝料額が500万円であることにも,違約金の額がその2倍ないし3倍であることにも法的根拠はなく,本件の違約金額の設定方法にも合理性は認められない。
そして,面会・連絡等禁止条項に違反してAと面会したり電話やメール等で連絡をとったりした場合の損害賠償(慰謝料)額は,その態様が悪質であってもせいぜい50万円ないし100万円程度であると考えられるから,履行確保の目的が大きいことを最大限考慮しても,少なくとも150万円を超える部分は,違約金の額として著しく合理性を欠くというべきである。
したがって,本件違約金条項のうち,150万円を超える部分は,著しく合理性を欠き,公序良俗に反し無効である。
ということで、せっかく1000万円の違約金を設定していましたが、実際に認められた違約金の額は150万円にとどまるとの判断となりました。
違約金の額を高額にし過ぎたがゆえに、その有効性を巡って裁判になってしまい、さらにはその結果として違約金の額が大幅に減額されることになってしまったといえます。
したがって、違約金条項を定めるとしても、あまりに高額にすると一定のリスクがあるということは認識しておく必要があります。
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