【大阪の離婚弁護士が教える】性欲が強すぎることが離婚理由となった事例

離婚訴訟において、妻側から夫の性欲が強すぎることが主張され、それが離婚を認める理由として認定された事例があるので、紹介します。

【大阪地裁昭和35年6月23日】

 被告は、人並以上に性慾が強く、家に居るときは原告をその身辺から離さず、絶えず原告の体に接触し、昼夜を問わず一日に数回も性交を求めることがあつた。原告は性交の度毎に靴を穿かされるので、その度に甚だしい嫌悪感に襲われ、被告の執拗且つ異常な性行為のために、性生活について好感よりもむしろ深刻な苦痛を感じていたことが認められる。

(中略)

 原告が本訴において離婚の事由として挙示するもののうち、右の性行為の異常性を除くと、その余の事実関係は前段認定のとおりであつて、夫婦の性格の相違による不和、夫の家族との葛藤、経済生活上の不満等は、いずれも原被告夫婦の今後の努力、反省、協力によつて解決向上の可能性のある事柄であると考えられるから、前段認定の事実関係のみでは、必ずしも婚姻を継続し難い重大な事由があるものとは言うことが出来ない。
 しかし乍ら、後段認定の如き被告の性生活における諸行動、殊に性交につき布団の上で原告に靴を穿かせる行為は、性感の増進を目的として一般に行わるべき性的技巧等とは異なり、相当異様な性交方法であつて、正常な性行為の範囲に属するものと言うことは出来ない。そして異常な性交方法であつても、それが相手方の完全な諒解の下に行われる場合は、当事者間においてその実施、継続が問題視せられるべき筋合はないが、本件の如く、相手方たる原告が、かかる性交方法を極度に忌避嫌悪しているにも拘らず、被告が何等これに対する緩和、誘導、馴致の労を払うことなく、相手方の意思を全く無視し、専ら自己の慾望満足のためにその行為を反覆強行し、その結果原告をして離婚のほかにその被害を回避すべき道なきものと決意せしめるに至つたとすれば、被告は矢張り、その結果が自己の恣意的異常行為に基くものとして、その帰責原因を負担すべきであり、かかる事態において、なお原告に当分の忍従を強いてみても、原被告間に将来性的和合に基く円満な結婚生活を期待することは、まことに不可能であると言わざるを得ない。元来汚い物品である靴を、寝室の布団の上で性行為の途中に穿かされると言うことから招来される堪え難い不潔感によつて、原告がひいて性交そのものについても甚だしい嫌悪感を抱くに至つたということは、若い女性としてまことに無理からぬところと言わねばならない。その結果として、結婚生活の基本となるべき性生活について、原被告間に右のような全く絶望的な不調和が存在する以上、原被告間の結婚生活は完全に破綻を来しているものと言うべく、その原因は前述の通り全く被告に在り、原告に離婚の途を閉ざしこれ以上陰欝と嫌悪にみちた生活の継続を強いることは甚だ苛酷であつて、是認することはできない。
 従つて原被告間には、民法第七七〇条第一項第五号所定の婚姻を継続し難い重大な事由があるものと認め、被告に対して離婚を求める原告の本訴請求はこれを認容すべきである。

 

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