【大阪の離婚弁護士が教える】家裁の裁判官や裁判所書記官が訴えられることがあるか?
以前の記事で家裁調査官の調査報告書の内容を理由とする国家賠償請求訴訟をご紹介しました。
今回は、離婚事件に関する家裁の裁判官と書記官の対応を理由とする国家賠償訴訟の裁判例(東京地判平成28年5月18日)を紹介したいと思います。
【事案の概要】
原告の配偶者が提起した離婚訴訟において、担当裁判官は原告の訴訟能力に関して職権調査をせず原告が訴訟能力を欠くことを看過して判決をし、また、担当裁判所書記官は原告に判決正本を送達しなかったもので、これらの違法により尊厳を傷つけられたとして、原告が、被告国に対し損害賠償を求めた事案。
【裁判所の判断】
(1) 原告は、別件訴訟の担当裁判官において、原告の訴訟能力に関する職権調査をせず、原告が訴訟能力を欠くことを看過して判決をしたとして、このような担当裁判官の行為には、違法性があると主張する。
しかしながら、別件訴訟において、原告が訴訟能力を欠いていたことを窺わせる事情が存在したと認めるに足りる証拠はない。かえって、前記1の認定事実によれば、原告は、6月23日にB代理人から原告本人であるかを尋ねられ、これを認める回答をしていること(前記1(3))、その後複数回にわたり、別件訴訟の送達書類に係る民事訴訟規則44条の通知を、受取拒否と明記して郵便ポストに投函し、又は宛名を手書きした封書により裁判所に返送していること(前記1(4)ないし(9))を指摘でき、このような原告の言動に照らすと、原告において、Bから離婚訴訟(別件訴訟)を提起されたことを認識した上で、送達書類の受領を拒絶するという事理弁識能力を有することを前提とした行動をとったものと推認されるのであって、別件訴訟の当時に原告が訴訟能力を欠いていたとはおよそ認められない。
したがって、原告の上記主張は、その前提を欠いており理由がない。
(2) 原告は、別件訴訟の担当書記官において原告に対する判決正本を送達しなかったとして、このような担当書記官の行為には違法性があると主張する。
しかしながら、証拠(乙34の1)によれば、原告に対する判決正本の送達は、原告の住所地をあて先として書留郵便に付して送達されたことが認められ、その送達手続について違法性があるとは認められない。また、担当書記官において、上記送達手続以外の方法により判決正本を交付すべき義務もない。
したがって、原告の主張は、その前提を欠いており理由がない。
(3) 以上によれば、別件訴訟において、担当裁判官及び担当書記官の行為に国家賠償法上の違法性があったとは認められない。
ということで、結論としては、裁判官、書記官いずれの行為にも違法性はないとして、国家賠償請求は否定されています。
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