【大阪の離婚弁護士が教える】再婚と養育費②~再婚相手と子が養子縁組はしなかったが、再婚相手の収入を考慮した事例~

前回の記事で説明したとおり、再婚相手と子どもが養子縁組した場合には、基本的には養育費の支払義務は消滅します。

翻って、元妻が再婚はしたものの、再婚相手と子どもが養子縁組をしなかった場合には、元夫の養育費には影響を与えないのが原則です。

しかし、養子縁組をしていない事案において、再婚相手の収入を考慮して養育費を算出した裁判例があるので、紹介することにします。

 

【大津家裁平成20年6月10日審判】

 先の調停後の事情として、相手方は、申立人の現夫と未成年者らは養子縁組こそしていないが、同一の生活基盤に属しており、養子縁組をしたのと同等の親子関係が生じているから、養育費の減額要素となっても、増額要素とはならない旨主張し、これに対し、申立人は、養子縁組していない以上、申立人の現夫に未成年者らを養育する義務はない旨反論している。
  世上の本件と同様の身分関係にある事例では、妻の再婚相手と前夫との間の子とが親子同様の生活実体を持ちながらも、妻が前夫から養育費の支払を受けるためにあえて養子縁組しないでいるというような場合から、妻の再婚相手が妻の子との生活に無関心であったり、妻の子が妻の再婚相手を拒絶したりするため、扶養面を含め親子類似の生活実体が殆ど形成されえないというような場合まで、様々な場合がありうる。
  ところで、本件では、現夫と3人の子供とで暮らしているが、夫婦で家計を別にしているなどと申立人が一方的に主張し、陳述する以上には、申立人側家族の生活実体は明らかでない(家庭裁判所調査官の事実調査に応じることについても、申立人は消極的であった。)。したがって、不詳の部分については一般的見地からの推測をもって判断するほかないところ、法律上、申立人の現夫には未成年者らを扶養する義務がないとしても、申立人の現夫と申立人間には、夫婦としての相互扶養義務があり、申立人は未成年者らの母としての扶養義務があり、これらはいずれも生活保持義務(自らと同等の生活をさせる義務)であるべきものと解されている。したがって、少なくとも申立人の現夫の収入から申立人に対する生活費等としての相応の所得移転(所得分配)があるものとみなし、これを申立人の実収入に加算した上で、相手方の収入と合わせ、これをもとに、その他の諸事情を考慮した上、相手方の支払うべき未成年者らの養育費の額を算定するのが相当と考えられる。
  そこで、申立人の現夫の収入を同年代の男性労働者の平均給与年額680万円程度と推定し(収入等不詳のため平成18年の賃金センサスによった。なお、申立人の陳述によると現夫は自営業者であるところ、後記の養育費の算定表上では、上記680万円は自営業者としての年収500万円前後に相当する。)、申立人の平成19年の給与収入は約243万円であり、他に営業等所得が22万円程度あり(市民税・G民税証明書による)、さらに、別紙の一応の推定試算によると、他に申立人に対する現夫からの所得移転(分配)が年額34万円程度はあるとみなすことができるから、本件養育費の算定上は、申立人の収入を年額300万円ないし350万円程度であるものとみなすことができる(ただし、申立人の現夫には、前妻との間の子が1人いるので、その養育費の負担状況は明らかでないものの、上記の額は幾分低めにみなすのが相当と思われる。)。

このようにして、本裁判例では、再婚相手の収入を推計した上で、元妻の方の収入を実際の収入よりもやや多く認定して養育費を算出しました。

この事案は、元妻側が抗告していますが、高裁でも結論が維持されています。

高裁の決定を見ると、「抗告人の夫は、不動産の賃貸を業とする自営業者であるが、その家族のみが役員である同族の株式会社を設立し、その代表取締役となって経営し、報酬については、年間360万円ないし400万円の給与を自らに支給するほか、同会社における家族役員に対し、合計で年間1440万円の報酬を支払う形式を取っていることが認められる。以上によると、抗告人の夫は、自営業者であり、自ら会社を経営して、その収益を実質的に支配しうる立場にあるといいうるところ、自らに給与を支給する形式を取っているものの、その名目上の給与額が、即、抗告人の夫の実際の自営収入の総額であると認めるには、合理的な疑いが残るので、原審が賃金センサスにより抗告人の夫の収入額を推認したのもやむを得ないということができる。したがって、この点の原審判の措置は不当であるということはできず、抗告人の上記主張は理由がなく採用できない。」と判断されています。

 

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