【大阪の離婚弁護士が教える】ホテルに入ったけど、性行為はしていないという弁解は通用するか

不貞行為が問題となる事件においては、当事者がホテルに出入りする写真が証拠として提出されることがよくあります。

このような証拠が出てきた場合、ホテルに入ったこと自体は動かしがたい事実ですから、これを否定することは基本的は無理であろうと思われます。

そこで、「ホテルには入ったが、〇〇をしていたのであって、性行為はしていない」というような反論が出されることがありますが、このような弁解は訴訟において通用するのでしょうか。

今回は、この点が問題となった裁判例をいくつか見ていきたいと思います。

【東京地裁平成29年2月15日判決】

 被告は,ホテルに宿泊したのは,雪のため帰宅することができなかったからであり,被告の自宅に宿泊したのも,Aが被告の手元にある離婚の裁判資料を見るためであった,前記(2)のとおり,被告には当時,別の交際相手がいたなどと主張するけれども,被告の主張するような事情があったとしても,被告とAとが不貞関係にあったとの前記認定を妨げるものではないというべきである。

 

【東京地裁平成29年9月1日判決】

 上記認定のとおり,被告においては,平成26年11月1日及び平成28年7月18日の各日,少なくとも2時間以上にわたり,ホテルの一室でAと共に過ごしたことが認められるところ,これらの各事実からは,被告とAにおいて不貞行為に及んだことが優に推認される。
 なお,被告は,上記の際に不貞行為に及んだことを否認し,本人尋問においても,上記各ホテルにおいては単に椅子で休んだり,楽器を教えてもらったりするなどしていただけであると供述するが,その述べるところは,ホテルの一室において二人で過ごす理由として合理的なものではなく,また,被告が,本件訴訟の第1回口頭弁論期日において,本件誓約書作成以降Aと一切連絡を取っていない旨虚偽の事実を述べていたことに照らしても,被告の供述は容易に信用することができない。

 

【東京地裁平成29年6月30日判決】

 上記認定事実によれば,被告とAは平成26年5月頃にいわゆる出会い系サイトで知り合い,同年7月から8月にかけて複数回直接会った後,同年8月27日には,本件ホテルにおいて指を絡めて手を繋いで居室に移動し,同居室内で2時間弱の時間を過ごし,同室から出てきた後も手を繋いだり体を密着させて歩くなどしていたのであるから,少なくとも同年8月27日には被告とAとの間で不貞行為があったことが推認できる。
 上記認定について,被告は,同年8月27日に本件ホテルの上記居室内には途中からBもいたのであり,Bがいつ帰ってくるかわからない状況であったのであるから不貞行為に及ぶことはなく,Aからの相談に乗るなどしていただけである旨主張し,被告もAもこれに沿う供述をする。しかしながら,上記認定事実によれば,同日Bが本件ホテルに宿泊予定であったことは認められるものの,被告とAが2時間弱の時間を過ごした部屋が宿泊予定の部屋であったことや,被告の主張する時間にBが本件ホテルに戻ってきたことを示す客観的な証拠はなく(翌朝もAが一人で本件ホテルを出てBとは別に行動していることからすると,そもそもBが同日本件ホテルに帰ってきた事実についても不明である。),また調査会社の調査報告書にBが本件ホテルに戻ってきた旨の報告がないことやAとBのメールのやりとり等の証拠提出もされていないこと,被告及びAが上記の相談のために本件ホテルのフロントではなく居室に移動する必要性について合理的な説明がされていないことや居室内でのBとの会話について(被告の主張によれば1時間程度BとAとの3人で会話をしていたことになる。)具体的な供述に欠けることに加え,Bがいつ戻るか分からない状況で母親であるAが被告と上記認定のように手を繋いで移動することも不自然であるといえることも併せ考慮すれば上記被告及びAの供述は採用できないというほかない。
 以上より,被告とAとの間に,平成26年8月27日,不貞行為があったと認められる。

 

以上のとおり、ここで挙げた裁判例は全て、「ホテルに入ったけど○○をしていたのであって、性行為はしていない」という類の反論を排斥し、不貞行為の存在を認定しています。

したがって、このような反論が認められるケースは相当稀ではないかと思われます。

 

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